こちら「ガンダム00」に心奪われたブログです!
見にくいですが勘弁!愛は本物です。基本、自己満足なんで期待は禁物!
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ゴミ箱作品。
ぽいっと。
設定はセカンド一覧にある【井野辺さん家に嫁ぐニールさんの話】です。
時間軸的にはティエリア3年生です。
ゴミ箱行きなので悪しからず。
---------------------------------------------------
パタンと、静かな部屋に携帯電話を閉じる音が響いた。
溜息が自然と漏れ、特に見たい番組など無いのにテレビを付けた。
リモコンを握ったままソファーに落ちる様に座り込めば、やはり溜息が出た。
「今日も……残業か」
残業とは仕事の方なのか、人付き合いの方なのか。
電話口の彼は若干疲れた声をしていた。
せめて自分はと明るく声を出したものの、実際はこっちも体に力が入らない。
時計の針が両方とも真上を指している、正直眠い。でも寝たくない。
待っていたって、彼が帰って来るのは後二時間後だろう。
週末は忙しいらしい。まあ、明日は土曜日で彼は休み。多少帰りが遅くても大丈夫だろう。
でも、自分は明日も授業がある。
進学科は流石に3年となると、土曜日は絶対に補修が入る。
夏休みの補講だって強制だ。
自分は推薦が貰えそうなのでそこまで焦っていないし、受ける大学も自分のレベルと丁度良いからそこまで苦ではない。
徐々に宿題の量が増え、家事の両立が大変なのが最近のちょっとした悩みなのだが。
「……寝た方が良いか」
好みの番組も放送されていない様だし。テレビを消すと隣の部屋へ移動する。
冷たいシーツはやはり不快だ。
シングルベッドの筈なのに、広く感じる。
ああ、そう言えば、前にこのベッドは正確に言うとセミダブルだと彼が言っていた気がする。
いいんだ。
次の日の朝、目を覚ますと昨日いなかった筈の彼が隣に寝ていて、
『おはよう』でなくて『ただいま』と言って微笑んでくれる。
それはそれで、このシチュエーションが自分は気に入っているのだ。
そう思わないとやって行けないから、そう思い込んでいるだけかもしれないが。
目覚まし時計のベルで目が覚め、煩いと呟いてスイッチを叩く。
「…っ!」
気付いた、彼が、隣にいなかった。
「帰って来て、ない?」
シーツを触ってみるが、自分が寝ていた所以外は温かくなかった。
朝早く出勤したと言う訳でもないのか。
「……携帯っ!」
枕元に置いてあった携帯を急いでチェックしたがメールも着信もなかった。
終電を逃したのか?
タクシーを使えば良いのに。
とりあえず朝食を作ろう。
パジャマから着替え、ダイニングに向かう。
水を入れたやかんをコンロにかけ、何を作ろうかと腕まくりした、その時だった。
「たーだいま」
覚えのある二本の腕が背後から伸びて来て自分を抱きすくめた。
「っ、ろ、ロックオン…?!」
「やー、昨日終電逃してさ、始発で帰って来たよ」
「ロックオン……」
「ニールって呼べよ、良い加減に」
「ニール、……ニールっ!」
自分の想像と当たっていて、やはり終電を逃し、始発で帰って来た。
安心した筈なのに、どうしてこんなにも不安を覚えるのだ?
「おっと、そんなに寂しかったか?」
「……別に、」
が、行動は真逆で、タックルと言った方が正しい程に強めに抱き付いていた。若干よろける彼。
「……どうした、お前?」
「どうも、してない……」
「……、そうか……」
頭を撫でられる。温かい。
きっと、朝食を食べたら寝るのだろうな。早く作ってやった方が良いな。
離れようとした時、
「……今日は休みだから」
珍しい、嬉しい、でも、
「すいません、今日は補修があります」
頭上から『え?』と声がする。毎週行っているだろうに、今更だ。
「あー……そうだっけか。もう3年生だもんな、そうだな」
あはは、もうボケが始まったか? なんて惚けてみせる。
「ティエリアは頑張り屋さんだな」
褒めてくれて、頭を撫でてくれる。
本当は、今日ずっとこうしていたいんだ、僕は。
「朝食、直ぐ作ります」
明日、日曜日があるじゃないか。
でも、胸が苦しいのです。
「折角、土曜日に休み貰ったのにな、勿体ないや」
「明日があります、学生は勉強が仕事ですから」
「お前さんは本当に優等生の鏡だな」
密着していた体を離すのは何とも心惜しかった。
朝もだんだんと寒くなって来ている、温かい彼にずっと包まれていたい。
離れると自分はキッチン前へ、彼は椅子に座った。
「酒の匂いはしませんでしたが、昨日は徹夜で仕事ですか?」
「それがさ、聞いてくれよティエリア! 急に明日までに出かさなきゃいけない書類があったって俺に回って来てさ。本当に、残業手当じゃ足んないぜ」
「会社に信頼されているんですね」
「……案外ポジティブだな、ティエリア」
「案外って何ですか、案外って」
自分は決してネガティブとか、根暗ではない。
ポジティブだと言ったら、違うが。
周りからは気が強いとか良く言われるが、自分は決してそうじゃないと思っている。
不本意にも、この男に何度泣かされたか。
耐えろ耐えろと思っても、自分は涙脆いらしい。
自分の嫌いな部分だし、いつか克服したいと強く思っている。
流石にこの程度で涙は出ないが、今、会社が休みである彼と過ごせないのは寂しいと思う。
寂しいとは格好悪くて素直に言えない性格だが、寂しいものは寂しいと思える。
人並みに寂しさは感じる。
「ねぇ、ロックオン?」
「ニールだろ?」
「もし、今日の夕方、突然『今日は友人の家で勉強会を開くから帰れません』と言ったら貴方はどうします?」
他愛もない会話を自分から振る事は滅多になく、それに今振った会話は、他愛もない会話に分類されるか分からない。
「何だ? 今日約束でもあるのか?」
「違います、あくまでも例えばです。どうですか?」
「まあ、学生らしくて良いんじゃないの? 友達同士で勉強会って学生の時にしか味わえないし、楽しいだろう」
いつも通りの声色。明るさ。
「では、友人宅で勉強してから帰ると連絡を寄越したのにも関わらず、突然深夜、『終電を逃したから泊まって行く』と連絡をした場合はどうですか?」
「…、……お前、俺が朝に帰って来た事怒ってんのか?」
「そ、そんなつもりではっ…!」
ハッとした。確かに、今の流れではそうなる。
「悪かったよ、終電逃したって連絡しなかったのは。でもさ、あれはもうティエリア寝てるだろうし、起こすのも悪いからそうしたんだよ」
「だから、私は怒って等いない!」
「私って言った。動揺してんだな?」
口を押さえた。
動揺すると、つい一人称が『私』になってしまう癖が自分にはある。
基本は『僕』。沢山いる兄や姉、でも圧倒的に男の方が多く、気付いたら自分は男勝りな女に育っていた。
男で生まれて来ても後悔はないと思っているし、男になれるならなりたいものだ。
因みに、一人称が『僕』なのは改善された方。
小学生の頃はリジェネと同じ黒いランドセルが良いと我が儘を言い、一人称は『俺』だった。
でも、今は割かし女で良いと思える様になった。
理由は一つ、彼と、結婚できる性別だから。
「み、味噌汁、インスタントで良いですか…?」
今の話は無かった。そうしたくて適当な話を振る。
「いいよ、無理して和食にしなくても。トーストで構わないし、コーヒーも自分で淹れる」
席に着いていた彼が立ち上がり、自分の横に来る。
緑色のマグカップを持つと自分からやかんを奪った。
「俺だって寂しいよ、ティエリア」
何の前触れもなく、そう言われた。
「………わた…僕は、別に」
「ふっ、…はいはい、強いですねティエリアさんは。俺はお前さんより年上だから、あんまりかっこ悪くて言えないけど寂しいんだぞ? 勉強勉強って俺の事構ってくれなくて」
自分が何をしているか分からなくなる。
包丁を握って、何を刻んでいるか。
寂しい、彼も、私がいなくて、さびしいの?
「ったぁ!!」
「っうぉ! お前指っ?!」
「ば、絆創膏!!」
「俺、取って来るな!」
料理はここ数年、彼と同居してから随分と腕が上がったと自負していたのに。
……これだ、自分はどうも切羽が詰まるとこうなる傾向がある。改善したい、改善しなくては…!
「ティエリア、指出せ」
「……すいません」
「危なっかしーの。俺が作ろうか?」
「とんでもない! 貴方こそ、徹夜で頭が働いてないでしょうに」
「睡眠取った上で指を切った奴に言われてもな~」
本当に大丈夫だと声を張る。
その後直ぐに後悔した、また子供の様な態度を取ってしまった…。
「ほんっと、目が離せねぇ」
絆創膏の上から指を撫でる。
「今日の補修って、何時まで?」
「3時までです」
「流石優等生……だな」
何て優しい仕草。今日、本当に補修なんて無くなれば良いのに。
「………午後の授業内容……得意科目だから、補修、いらない…かも」
言った後に気付いた。
「ああああのっ! 別に貴方が休みだからとかっ! そう言うのじゃありません! 断じて、そのっ!」
「あはははっ、ティエリア、もう遅い」
腹を抱えて笑うニール。
恥ずかしい、何と言う失態。
ひーひー言いながら頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。
「あー、でも安心したよ」
「あん…しんだと…?」
人の事笑っておいて?
「寂しいって言ってくれないし、何で早く帰って来ないんだって怒らないし」
「仕事ですし」
「不安なんだよ、溜め込んで溜め込んで、泣かれちゃ困るから」
泣く……。
そこはいつか改善してみせます!
「いざ聞くと動揺して指切っちゃうし」
「これは、本当にたまたまで…!」
「無心で抱き付いて来て、名前とか呼ばれりゃあ……」
手首を掴まれ、引き寄せられた。
「まあ、いざ泣かれちゃ困るけど、たまには『早く帰って来てー、寂しいよー』って泣いて欲しいな、ティエリア」
「言ってますよ、寂しいって」
「いや、言ってない。回りくどい……っつか、言えなくて態度に滲み出て来てるからな、お前」
顔が近い、これでは、このまま、彼と。
「キスしたいって、お前から言ってくれよ、たまには」
「……す、したい………ん」
「……はい、良く出来ました」
嬉しそうに彼は笑ってくれた。
キス一つでこんなに喜んでくれるなんて。
「キス一つで、こんなに顔真っ赤にしちゃって。可愛いなぁティエリアは」
「なっ?! それは貴方でっ…!」
「だって、今日ティエリアは学校だから俺、超寂しいんだもん」
貴方はどうして、そう簡単に寂いとか言ってのけるんだ。
「午後には帰って来ます……」
「うん、ありがとうティエリア」
「勉強、分からなかったら貴方に聞きます」
「ティエリア……、俺が学生の頃、何科だったか知ってるか…?」
「貴方大学出たでしょう」
う~ん、何年前の話をしてるんだと、冗談半分のつもりの言葉で本気に悩む彼を見ていると、本当に学校に行きたくなくなる。
寂しい。寂しかった。
上手く言えない場合は、どう伝えたら良いのだろう。
「あんまり、遅く帰って来てばかりいると、兄さんや姉さん達に会いに行きますからね?」
「うぇえええ?! ティ、ティエリア! それだは勘弁してくれぇっ…!」
反応が予想以上で面白い。
しかし、その後暫く無言で、どうしたのだろうと顔を見れば、難しそうな顔をして唸っていた。
「あ、……じゃあさ、学校にバレないように車で迎えに行くからさ。その後隣町にでも行ってデートしようか?」
「で…?! でっ…と?!」
「落ち着けって、ほんっとに反応が一々可愛いなぁ、ティエリアは」
形勢逆転された。
悔しい、彼には本当に敵わない。
「デート等しなくても……、私は、今晩一緒に寝てくれるなら………それで構わないです……」
それが精一杯の反抗で、本音であったりもする。
「………、ごめん、お前さんには敵わないや」
自分が思っている事と全く同じ事を言うから、驚く。
でも、僕に何が敵わないか主語が無い。
何が、貴方より勝っているのだ?
「さ、朝食食べようか? 登校時間遅れるぞ?」
「では、今日はデートした後に一緒に寝ましょうね?」
「……何とも聞くだけならふしだらだな……」
「はい?」
「いや、こっちの話」
ぽいっと。
設定はセカンド一覧にある【井野辺さん家に嫁ぐニールさんの話】です。
時間軸的にはティエリア3年生です。
ゴミ箱行きなので悪しからず。
---------------------------------------------------
パタンと、静かな部屋に携帯電話を閉じる音が響いた。
溜息が自然と漏れ、特に見たい番組など無いのにテレビを付けた。
リモコンを握ったままソファーに落ちる様に座り込めば、やはり溜息が出た。
「今日も……残業か」
残業とは仕事の方なのか、人付き合いの方なのか。
電話口の彼は若干疲れた声をしていた。
せめて自分はと明るく声を出したものの、実際はこっちも体に力が入らない。
時計の針が両方とも真上を指している、正直眠い。でも寝たくない。
待っていたって、彼が帰って来るのは後二時間後だろう。
週末は忙しいらしい。まあ、明日は土曜日で彼は休み。多少帰りが遅くても大丈夫だろう。
でも、自分は明日も授業がある。
進学科は流石に3年となると、土曜日は絶対に補修が入る。
夏休みの補講だって強制だ。
自分は推薦が貰えそうなのでそこまで焦っていないし、受ける大学も自分のレベルと丁度良いからそこまで苦ではない。
徐々に宿題の量が増え、家事の両立が大変なのが最近のちょっとした悩みなのだが。
「……寝た方が良いか」
好みの番組も放送されていない様だし。テレビを消すと隣の部屋へ移動する。
冷たいシーツはやはり不快だ。
シングルベッドの筈なのに、広く感じる。
ああ、そう言えば、前にこのベッドは正確に言うとセミダブルだと彼が言っていた気がする。
いいんだ。
次の日の朝、目を覚ますと昨日いなかった筈の彼が隣に寝ていて、
『おはよう』でなくて『ただいま』と言って微笑んでくれる。
それはそれで、このシチュエーションが自分は気に入っているのだ。
そう思わないとやって行けないから、そう思い込んでいるだけかもしれないが。
目覚まし時計のベルで目が覚め、煩いと呟いてスイッチを叩く。
「…っ!」
気付いた、彼が、隣にいなかった。
「帰って来て、ない?」
シーツを触ってみるが、自分が寝ていた所以外は温かくなかった。
朝早く出勤したと言う訳でもないのか。
「……携帯っ!」
枕元に置いてあった携帯を急いでチェックしたがメールも着信もなかった。
終電を逃したのか?
タクシーを使えば良いのに。
とりあえず朝食を作ろう。
パジャマから着替え、ダイニングに向かう。
水を入れたやかんをコンロにかけ、何を作ろうかと腕まくりした、その時だった。
「たーだいま」
覚えのある二本の腕が背後から伸びて来て自分を抱きすくめた。
「っ、ろ、ロックオン…?!」
「やー、昨日終電逃してさ、始発で帰って来たよ」
「ロックオン……」
「ニールって呼べよ、良い加減に」
「ニール、……ニールっ!」
自分の想像と当たっていて、やはり終電を逃し、始発で帰って来た。
安心した筈なのに、どうしてこんなにも不安を覚えるのだ?
「おっと、そんなに寂しかったか?」
「……別に、」
が、行動は真逆で、タックルと言った方が正しい程に強めに抱き付いていた。若干よろける彼。
「……どうした、お前?」
「どうも、してない……」
「……、そうか……」
頭を撫でられる。温かい。
きっと、朝食を食べたら寝るのだろうな。早く作ってやった方が良いな。
離れようとした時、
「……今日は休みだから」
珍しい、嬉しい、でも、
「すいません、今日は補修があります」
頭上から『え?』と声がする。毎週行っているだろうに、今更だ。
「あー……そうだっけか。もう3年生だもんな、そうだな」
あはは、もうボケが始まったか? なんて惚けてみせる。
「ティエリアは頑張り屋さんだな」
褒めてくれて、頭を撫でてくれる。
本当は、今日ずっとこうしていたいんだ、僕は。
「朝食、直ぐ作ります」
明日、日曜日があるじゃないか。
でも、胸が苦しいのです。
「折角、土曜日に休み貰ったのにな、勿体ないや」
「明日があります、学生は勉強が仕事ですから」
「お前さんは本当に優等生の鏡だな」
密着していた体を離すのは何とも心惜しかった。
朝もだんだんと寒くなって来ている、温かい彼にずっと包まれていたい。
離れると自分はキッチン前へ、彼は椅子に座った。
「酒の匂いはしませんでしたが、昨日は徹夜で仕事ですか?」
「それがさ、聞いてくれよティエリア! 急に明日までに出かさなきゃいけない書類があったって俺に回って来てさ。本当に、残業手当じゃ足んないぜ」
「会社に信頼されているんですね」
「……案外ポジティブだな、ティエリア」
「案外って何ですか、案外って」
自分は決してネガティブとか、根暗ではない。
ポジティブだと言ったら、違うが。
周りからは気が強いとか良く言われるが、自分は決してそうじゃないと思っている。
不本意にも、この男に何度泣かされたか。
耐えろ耐えろと思っても、自分は涙脆いらしい。
自分の嫌いな部分だし、いつか克服したいと強く思っている。
流石にこの程度で涙は出ないが、今、会社が休みである彼と過ごせないのは寂しいと思う。
寂しいとは格好悪くて素直に言えない性格だが、寂しいものは寂しいと思える。
人並みに寂しさは感じる。
「ねぇ、ロックオン?」
「ニールだろ?」
「もし、今日の夕方、突然『今日は友人の家で勉強会を開くから帰れません』と言ったら貴方はどうします?」
他愛もない会話を自分から振る事は滅多になく、それに今振った会話は、他愛もない会話に分類されるか分からない。
「何だ? 今日約束でもあるのか?」
「違います、あくまでも例えばです。どうですか?」
「まあ、学生らしくて良いんじゃないの? 友達同士で勉強会って学生の時にしか味わえないし、楽しいだろう」
いつも通りの声色。明るさ。
「では、友人宅で勉強してから帰ると連絡を寄越したのにも関わらず、突然深夜、『終電を逃したから泊まって行く』と連絡をした場合はどうですか?」
「…、……お前、俺が朝に帰って来た事怒ってんのか?」
「そ、そんなつもりではっ…!」
ハッとした。確かに、今の流れではそうなる。
「悪かったよ、終電逃したって連絡しなかったのは。でもさ、あれはもうティエリア寝てるだろうし、起こすのも悪いからそうしたんだよ」
「だから、私は怒って等いない!」
「私って言った。動揺してんだな?」
口を押さえた。
動揺すると、つい一人称が『私』になってしまう癖が自分にはある。
基本は『僕』。沢山いる兄や姉、でも圧倒的に男の方が多く、気付いたら自分は男勝りな女に育っていた。
男で生まれて来ても後悔はないと思っているし、男になれるならなりたいものだ。
因みに、一人称が『僕』なのは改善された方。
小学生の頃はリジェネと同じ黒いランドセルが良いと我が儘を言い、一人称は『俺』だった。
でも、今は割かし女で良いと思える様になった。
理由は一つ、彼と、結婚できる性別だから。
「み、味噌汁、インスタントで良いですか…?」
今の話は無かった。そうしたくて適当な話を振る。
「いいよ、無理して和食にしなくても。トーストで構わないし、コーヒーも自分で淹れる」
席に着いていた彼が立ち上がり、自分の横に来る。
緑色のマグカップを持つと自分からやかんを奪った。
「俺だって寂しいよ、ティエリア」
何の前触れもなく、そう言われた。
「………わた…僕は、別に」
「ふっ、…はいはい、強いですねティエリアさんは。俺はお前さんより年上だから、あんまりかっこ悪くて言えないけど寂しいんだぞ? 勉強勉強って俺の事構ってくれなくて」
自分が何をしているか分からなくなる。
包丁を握って、何を刻んでいるか。
寂しい、彼も、私がいなくて、さびしいの?
「ったぁ!!」
「っうぉ! お前指っ?!」
「ば、絆創膏!!」
「俺、取って来るな!」
料理はここ数年、彼と同居してから随分と腕が上がったと自負していたのに。
……これだ、自分はどうも切羽が詰まるとこうなる傾向がある。改善したい、改善しなくては…!
「ティエリア、指出せ」
「……すいません」
「危なっかしーの。俺が作ろうか?」
「とんでもない! 貴方こそ、徹夜で頭が働いてないでしょうに」
「睡眠取った上で指を切った奴に言われてもな~」
本当に大丈夫だと声を張る。
その後直ぐに後悔した、また子供の様な態度を取ってしまった…。
「ほんっと、目が離せねぇ」
絆創膏の上から指を撫でる。
「今日の補修って、何時まで?」
「3時までです」
「流石優等生……だな」
何て優しい仕草。今日、本当に補修なんて無くなれば良いのに。
「………午後の授業内容……得意科目だから、補修、いらない…かも」
言った後に気付いた。
「ああああのっ! 別に貴方が休みだからとかっ! そう言うのじゃありません! 断じて、そのっ!」
「あはははっ、ティエリア、もう遅い」
腹を抱えて笑うニール。
恥ずかしい、何と言う失態。
ひーひー言いながら頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。
「あー、でも安心したよ」
「あん…しんだと…?」
人の事笑っておいて?
「寂しいって言ってくれないし、何で早く帰って来ないんだって怒らないし」
「仕事ですし」
「不安なんだよ、溜め込んで溜め込んで、泣かれちゃ困るから」
泣く……。
そこはいつか改善してみせます!
「いざ聞くと動揺して指切っちゃうし」
「これは、本当にたまたまで…!」
「無心で抱き付いて来て、名前とか呼ばれりゃあ……」
手首を掴まれ、引き寄せられた。
「まあ、いざ泣かれちゃ困るけど、たまには『早く帰って来てー、寂しいよー』って泣いて欲しいな、ティエリア」
「言ってますよ、寂しいって」
「いや、言ってない。回りくどい……っつか、言えなくて態度に滲み出て来てるからな、お前」
顔が近い、これでは、このまま、彼と。
「キスしたいって、お前から言ってくれよ、たまには」
「……す、したい………ん」
「……はい、良く出来ました」
嬉しそうに彼は笑ってくれた。
キス一つでこんなに喜んでくれるなんて。
「キス一つで、こんなに顔真っ赤にしちゃって。可愛いなぁティエリアは」
「なっ?! それは貴方でっ…!」
「だって、今日ティエリアは学校だから俺、超寂しいんだもん」
貴方はどうして、そう簡単に寂いとか言ってのけるんだ。
「午後には帰って来ます……」
「うん、ありがとうティエリア」
「勉強、分からなかったら貴方に聞きます」
「ティエリア……、俺が学生の頃、何科だったか知ってるか…?」
「貴方大学出たでしょう」
う~ん、何年前の話をしてるんだと、冗談半分のつもりの言葉で本気に悩む彼を見ていると、本当に学校に行きたくなくなる。
寂しい。寂しかった。
上手く言えない場合は、どう伝えたら良いのだろう。
「あんまり、遅く帰って来てばかりいると、兄さんや姉さん達に会いに行きますからね?」
「うぇえええ?! ティ、ティエリア! それだは勘弁してくれぇっ…!」
反応が予想以上で面白い。
しかし、その後暫く無言で、どうしたのだろうと顔を見れば、難しそうな顔をして唸っていた。
「あ、……じゃあさ、学校にバレないように車で迎えに行くからさ。その後隣町にでも行ってデートしようか?」
「で…?! でっ…と?!」
「落ち着けって、ほんっとに反応が一々可愛いなぁ、ティエリアは」
形勢逆転された。
悔しい、彼には本当に敵わない。
「デート等しなくても……、私は、今晩一緒に寝てくれるなら………それで構わないです……」
それが精一杯の反抗で、本音であったりもする。
「………、ごめん、お前さんには敵わないや」
自分が思っている事と全く同じ事を言うから、驚く。
でも、僕に何が敵わないか主語が無い。
何が、貴方より勝っているのだ?
「さ、朝食食べようか? 登校時間遅れるぞ?」
「では、今日はデートした後に一緒に寝ましょうね?」
「……何とも聞くだけならふしだらだな……」
「はい?」
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HN:
兎羽
HP:
性別:
女性
職業:
実家に帰りたい盛り
趣味:
見ての通り
自己紹介:
只今実家を離れて就職中(東北出身)
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
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