こちら「ガンダム00」に心奪われたブログです!
見にくいですが勘弁!愛は本物です。基本、自己満足なんで期待は禁物!
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大分前にやった【やつ】です。
いつかリボンズサイドもやりたいと言っていましたが、とりあえず前編を……。
表記をRsideにしたかったけど、イノベさん達はR付く人が他にもいるんですね。
そうだ。
君にパンフレット送っておいたから。
うん、そうだよ。ちゃんと目を通してね?
そうだなぁ、一ヶ月後にしようか。土曜日なら君も学校休みだろう、帰宅部君?
その日に返事を聞きに行くよ。
え? メールで良い?
それはないな、君、適当な大学名送る気だろう?
信用してない? っは、今更だね。
ああ、後ね――
ううん、何でもない。じゃあ、ちゃんと考えておくんだよ、リジェネ?
【It becomes you and a mistress
that I am ignorant】
珍しく、心躍る自分がいた。
どんな大きな会社との契約の時よりも心臓が期待に跳ねる。
黙っていても、自然と笑みが浮かぶ。
1ヶ月後、僕はリジェネの家に行く。
デスクに散らかった書類の上に肘を突いた。
そして大きく息を吐く。
この、嘗て父親が座っていた椅子に僕は今座っていた。
ブリングも、デヴァインも父の席を欲しがらなかった。
アニューも首を振り、普通の生活を選んだ。
こんな美味しい席、誰かに譲る位なら僕が貰い受ける。
大学を退学するなんて選択肢はなかった。
卒業に必要な単位なんて簡単に取れた。
どこよりも高い高層ビル、今も昔も実に絶景だと思う。
人を見下ろすこの景色にも随分と慣れた。
二度と此処には帰って来ないと誓ったあの子供の頃。
今は毎日来ている。
この部屋は実に思い出深い。
この部屋で口論している二人の女を思い出して笑った。
思い出し笑い、当時も僕は面白い女達だと笑っていた。
一方は僕とヒリングの、もう一方はアニューとリヴァイブの母だった。
どっちが本命だの、お前が愛人だのと口論していた。
どっちも、本気な訳ないのに。と、怯える幼い妹の手を握りながら考えていた。
もう一方の母親が連れている子供、つまり腹違いの兄弟達を、可哀想な運命だ。と自分も同じ立場なのに同情していた。
何て不毛な討論だ。
幼い自分は女達の口論よりも窓からの風景に興味が湧いた。
逆に子供らしいか?
何て凄い景色なんだ。
そう兄弟達に話し掛けた記憶がある。
僕は嫌いなんて感情抱かなかった。
あの男に感情なんて抱かなかった。
「ケーキでも買って行こうかな? ……あからさまかな」
父親にも、母親にも興味も感情も湧かなかった。
なのにだ、
「あ、もしもし、僕です、リボンズ・アルマークです、はい。
来月の予定ですが―――」
受話器を取り、僕よりもっと上にいる人物に電話を掛けた。
何故だか、兄弟絡みでは僕は動く。
熊のヌイグルミ、買った方が良かったかな?
ケーキ、買ってくれば良かった。
箱クッキーの一つでも提げてくれば良かった。
悶々と悩む自分に気付き、内心驚いた。
顔には出さないが。
1ヶ月なんて直ぐに経つものだ。
でも、今月だけは少し長く感じた。
珍しく、車ではなく電車を何年振りかに利用した。
僕専属の運転手に「今日は雨ですので」と止められたが断った。
一人で行きたい気分だったのだ。
ブリング、リジェネ、そして最近僕が見付け出した妹・ティエリアが暮らすマンションが見えて来る。
もっと良い所に住めばいいのに、と何度言おうと「これ位が丁度良い」と僕の儲けを受け取ろうとしない。
通勤・通学を理由にブリングとリジェネは家を出て行ってしまった。
はっきり言って、僕の、僕達の家は豪邸なのに。
ティエリアも、母親も同じリジェネと一緒の方が良いだろうとブリング宅に預けたものの、何故だか後悔と言う物に近い感情を抱いている。
後悔と言うにはモヤモヤし過ぎている。
傘を自ら差すのは久し振りだな。
気付くと自分は随分と偉い地位に着いたもんだ。
白いマンション。小さ過ぎず大き過ぎず。
最後に来たのは何時だろうと考えながら門を潜った。
バシャン。
それは水の中に落ちる音。
違った、水溜りの中を跳ねる音だった。
桃色の傘。
同じ色の長靴。
水飛沫と一緒に跳ねる紫色。
「ティエ……」
あまりにも突然の出会いだった。
部屋の中で出会うものとばかり思っていたから。
こんな雨の日に、どうして外に。
その答えは直ぐに浮かんだ。
リジェネがほっといた。
理由は僕が今日来るから。
母親と同じ髪色と髪質。
サラサラと紫が揺れた。
彼女の母親は実に綺麗だった。
コロコロ変わる父親の女が面白くて、たまに干渉していた。
当時の年齢は聞かないで欲しい。
その中でも、リジェネとティエリアの母親は群を抜いて綺麗だった。
何処のモデルだ。そもそも人間か?
見た目は本当の女神だった。
しかしやった事は悪魔。
あの男も美貌に相当やられたのだろう。リジェネを捨てた数年後、再びあの男に近付きティエリアと言う存在を産み出し利用した。
酷い話だ。
捨てられる事を運命付けられたティエリア。
まあ、僕ら兄弟はみんなそんなもんだろうけど。
女も金目当てだったし、父親も憂さ晴らしだろうし。
ばしゃん、
ほら、服に飛沫が。
ブリングの話だと、同じマンションに同学年の男の子がいると聞いたのだが。
生憎出掛けたと言ったところか?
話し掛けようか?
このままじゃ、体が冷えるし、濡れて風邪でも引かれたら困る。
「雨の時は、外で遊んじゃ駄目だよ」
ピタリ、ティエリアの動きが止まった。
しかし、こちらに気付いている筈なのに何故だか傘を上げてくれない。
ゆっくりだが、確実に傘を傾けている。
「君のお兄さんは何をしているんだか」
小学校1年生だよ?
誘拐されたらどうするんだ。
傘からやっと赤い瞳が覗いた。
ティエリアが微かに何かを喋った。
「ん?」
目が合った。
どくん、と心臓が大きく打つ。
以前は感じなかったこの心臓の打つ心地。
胸から何かが込み上げて来ている。
今すぐ吐き出したい衝動に駆られるが、何を吐きだしたいか分からない。
「リ…ボ……ンズ?」
微かにだが、確実に僕の名前を呼んだ。
……覚えていてくれた。一回会ったっきり。
てっきり、忘れたのかと思っていた。
たったこれだけの事で、僕はこんなにも喜んでる。
「……」
ティエリアがまた小さな口を小さく開閉する。
「何だい?」
はっとしたティエリアが顔を少し赤らめながら首を左右に振った。
その仕草が、この上なく可愛くて。
頬の筋肉が緩んで行く。
愛想笑いでもなく、自嘲でもなく、相手を見下す笑いでもなく。
なのに、ティエリアは何故だか僕から目を逸らした。
「さ、お部屋に戻ろうか」
もう秋だ。更に今日は雨が降っているから冷える。
「ティエリア?」
久し振りに声に出して呼んだ。
何時も心の中では何度も呼んだが、声に出す事はあまりしない。
決して家の中で話題にならない訳じゃないのに、何故だろうか?
子供の行動は実に訳が分からない。
両耳を何故だか塞いでいる。
特に家に入りたくないと駄々を捏ねている様に見えないし。
「どうしたんだい?」
革靴が濡れる事も気にせず、水溜りの中に一歩踏み出す。
あの日の様に、もう一度手を引いて家に入りたい。
孤児院から彼女を連れ出した日、あの時の手の感触が忘れられない。
彼女の掌を掴んだ筈なのに、僕は何も掴めていなかった。
「…ぅあっ?!」
妹の体が90°から60°、45°、30°、遂に0。
「ティエリア!!」
桃色の傘が宙に投げ出され、ティエリアの体は地面、基水溜りにダイブした。
「ティエリア?! 大丈夫かい?!!」
自分も気付くと傘を投げ出していた。
水溜りの中に大の字でポカン顔。一瞬何が起こっているか分からないのだろう。
「うぇ………」
時間差。
じわり、雨に紛れて。
「怪我無い? ティエリア?」
「……~」
くしゃり、顔が歪んでいく。
ぽろりぽろり、大粒の雨。
これは焦った。
ティエリアを抱えて急いで部屋に戻った。
最後に走ったのは高校の体育かもしれない。
こんな僕、誰にも見られたくない。
鍵は予想通り開いていた。
不用心だと思っている暇がない。
当然急いでお風呂に向かった。
水溜りですっかり汚れた体。
「っくしゅ!」
可愛らしいくしゃみに驚いた。
急いで赤い蛇口を捻る。
「ほら、もっと温度上げないと」
体に触れると冷たくて。
リジェネ、君は何て事をしてくれたんだ。ティエリアをあんな雨の中に。
「寒くない?」
首を振る。それは良かった。が、やはり僕の方を見てくれない。
でも、僕は確信している。
きっと泣いた事を恥じているんだろうと。
泣いていいのに。君はまだまだ小さい子供なんだ。
「もう少し浴びてなさい、バスタオル取って来るからね」
目も合わせない、声も小さくて何を言っているか分からない。
本来なら怒るところだが、ティエリアだと何故か楽しい。面白くて仕方ない。
そして胸が焦がれて行く。
ああ、これは焦がれているのか。
リビングにはティエリアのと思われるバスタオルを見付ける。
ピンクなんてティエリアしかいないだろう。
「ティエリア、出ておいで。体拭いてあげるよ?」
浴室から出てきたティエリアは半歩出た時点で固まった。
「ぁっ……」
急に何かに躊躇している様子。
早く体を拭かないと同じ事だ。
「ティエリア、早くおいで」
「ぅ……」
何か言いたげだが、言う事はないだろう。
構わず手を引き自分の前へ。
頭からバスタオルを被せ、髪をわしゃわしゃ。
目をギュッと瞑って耐える表情はまるで子犬の様だった。
思わず笑ってしまった。
「可愛いね、ティエリアは」
ティエリアはその一言でカーッと赤くなってしまう。
そう、その表情の変化が僕は堪らなく愉快だ。
タオル越しに感じる体の線は予想以上に小さくて内心驚いていた。
体の厚みが違う。
首筋の細さ。
手足の短さ。
タオル一枚で全て隠れてしまう。
可愛いよ、
「何処も彼処も小さくて」
僕にもこんな時期があったと思うと不思議だ。
僕も君ほど純粋だったのだろうか?
「ふっ…、くすぐったい……」
ティエリアの笑顔を見ると何故だか安心出来る。
ふと、洗面台の鏡が目に入り、驚いた。
自分も、こんな笑い方が出来たんだと。
「君は本当に可愛いよ」
人の頭を柄にもなく撫でたい気分だった。愛でたい気分だった。
しかし、ティエリアの頭は僕から逃げた。
顔を赤く染めてしまう、照れ屋な君が可愛くて仕方ない。
「照れ屋さんだね、ティエリアは」
不意を突いてティエリアの小さな手を掴んだ。
ああ、とっても柔らかいよ。
久し振りに訪れたこの家。
大した変化見受けられない。洗濯物がカラフルになった位か。
ブリングは会社に行っただろう。
まあ、彼は別にいなくても構わない。
問題は今回の目的。
目的なのか、こじ付けなのか。
兎に角、きっと彼はこの家の何処かに居る。
彼はインドア。
「……ティエリア、どうかしたのかい…?」
聞こえた声は目的の人物。
彼の自室のドアが少し開いていて、誰かがこちらを覗いていた。
風呂上り姿のティエリアを見て驚いたリジェネは、僕に気付かないのか、ティエリアに走り寄る。
そこまで君も必死なんだ。
ああ、髪の毛もボサボサ。
どうせ君の事だから、深夜までテレビかゲームでもして夜更かししていたんだろう?
今頃起床なんて、どうして君はそう自堕落なんだ。
ティエリアに質問攻めするリジェネは僕にまだ気付いてない。
ここで、確信的な証言が出た。
『それより、リジェネ、寝てなくていいの? 死んじゃうよ?』
それだけでティエリアに何て言ったか把握出来た。
きっと、自分は病気だから、今日一日中寝てなくちゃ死んじゃうー。とか言ったんだろう。
だから、お客が来ても居留守を使えと。
残念、ティエリアは飽きて表に出ていた。
「へぇ、君は死んじゃうのか」
ビク。と固まるリジェネ。ゆっくりと首を上げた。
「あ……リボンズ………おはよー…ございます」
とりあえず笑顔であいさつ。いや、顔が引き攣っている。
「君はこんな小さい妹を放っておいて狸寝入かい?」
ティエリアの行動を予測出来ないのか?
「た…狸寝入りなんて……」
目線を逸らした。狸寝入りじゃないだと?
僕は全てを既に悟っているんだよ?
「大丈夫かい? 体調不良なのかい? なら寝てても良いよ?」
「えー……、いやぁ…。
か…顔洗ってきます……」
小走りで洗面所へ向かうリジェネ。
ティエリアは僕達のやり取りに付いていけないのかポカン顔。
微笑んであげるも、やはり目線を逸らされ、手を離してしまう。
若干、それ傷ついているんだよ、僕。
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≪後半、一文字も考えてません。完成させたいんだけど、、、どうだろうか≫
いつかリボンズサイドもやりたいと言っていましたが、とりあえず前編を……。
表記をRsideにしたかったけど、イノベさん達はR付く人が他にもいるんですね。
そうだ。
君にパンフレット送っておいたから。
うん、そうだよ。ちゃんと目を通してね?
そうだなぁ、一ヶ月後にしようか。土曜日なら君も学校休みだろう、帰宅部君?
その日に返事を聞きに行くよ。
え? メールで良い?
それはないな、君、適当な大学名送る気だろう?
信用してない? っは、今更だね。
ああ、後ね――
ううん、何でもない。じゃあ、ちゃんと考えておくんだよ、リジェネ?
【It becomes you and a mistress
that I am ignorant】
珍しく、心躍る自分がいた。
どんな大きな会社との契約の時よりも心臓が期待に跳ねる。
黙っていても、自然と笑みが浮かぶ。
1ヶ月後、僕はリジェネの家に行く。
デスクに散らかった書類の上に肘を突いた。
そして大きく息を吐く。
この、嘗て父親が座っていた椅子に僕は今座っていた。
ブリングも、デヴァインも父の席を欲しがらなかった。
アニューも首を振り、普通の生活を選んだ。
こんな美味しい席、誰かに譲る位なら僕が貰い受ける。
大学を退学するなんて選択肢はなかった。
卒業に必要な単位なんて簡単に取れた。
どこよりも高い高層ビル、今も昔も実に絶景だと思う。
人を見下ろすこの景色にも随分と慣れた。
二度と此処には帰って来ないと誓ったあの子供の頃。
今は毎日来ている。
この部屋は実に思い出深い。
この部屋で口論している二人の女を思い出して笑った。
思い出し笑い、当時も僕は面白い女達だと笑っていた。
一方は僕とヒリングの、もう一方はアニューとリヴァイブの母だった。
どっちが本命だの、お前が愛人だのと口論していた。
どっちも、本気な訳ないのに。と、怯える幼い妹の手を握りながら考えていた。
もう一方の母親が連れている子供、つまり腹違いの兄弟達を、可哀想な運命だ。と自分も同じ立場なのに同情していた。
何て不毛な討論だ。
幼い自分は女達の口論よりも窓からの風景に興味が湧いた。
逆に子供らしいか?
何て凄い景色なんだ。
そう兄弟達に話し掛けた記憶がある。
僕は嫌いなんて感情抱かなかった。
あの男に感情なんて抱かなかった。
「ケーキでも買って行こうかな? ……あからさまかな」
父親にも、母親にも興味も感情も湧かなかった。
なのにだ、
「あ、もしもし、僕です、リボンズ・アルマークです、はい。
来月の予定ですが―――」
受話器を取り、僕よりもっと上にいる人物に電話を掛けた。
何故だか、兄弟絡みでは僕は動く。
熊のヌイグルミ、買った方が良かったかな?
ケーキ、買ってくれば良かった。
箱クッキーの一つでも提げてくれば良かった。
悶々と悩む自分に気付き、内心驚いた。
顔には出さないが。
1ヶ月なんて直ぐに経つものだ。
でも、今月だけは少し長く感じた。
珍しく、車ではなく電車を何年振りかに利用した。
僕専属の運転手に「今日は雨ですので」と止められたが断った。
一人で行きたい気分だったのだ。
ブリング、リジェネ、そして最近僕が見付け出した妹・ティエリアが暮らすマンションが見えて来る。
もっと良い所に住めばいいのに、と何度言おうと「これ位が丁度良い」と僕の儲けを受け取ろうとしない。
通勤・通学を理由にブリングとリジェネは家を出て行ってしまった。
はっきり言って、僕の、僕達の家は豪邸なのに。
ティエリアも、母親も同じリジェネと一緒の方が良いだろうとブリング宅に預けたものの、何故だか後悔と言う物に近い感情を抱いている。
後悔と言うにはモヤモヤし過ぎている。
傘を自ら差すのは久し振りだな。
気付くと自分は随分と偉い地位に着いたもんだ。
白いマンション。小さ過ぎず大き過ぎず。
最後に来たのは何時だろうと考えながら門を潜った。
バシャン。
それは水の中に落ちる音。
違った、水溜りの中を跳ねる音だった。
桃色の傘。
同じ色の長靴。
水飛沫と一緒に跳ねる紫色。
「ティエ……」
あまりにも突然の出会いだった。
部屋の中で出会うものとばかり思っていたから。
こんな雨の日に、どうして外に。
その答えは直ぐに浮かんだ。
リジェネがほっといた。
理由は僕が今日来るから。
母親と同じ髪色と髪質。
サラサラと紫が揺れた。
彼女の母親は実に綺麗だった。
コロコロ変わる父親の女が面白くて、たまに干渉していた。
当時の年齢は聞かないで欲しい。
その中でも、リジェネとティエリアの母親は群を抜いて綺麗だった。
何処のモデルだ。そもそも人間か?
見た目は本当の女神だった。
しかしやった事は悪魔。
あの男も美貌に相当やられたのだろう。リジェネを捨てた数年後、再びあの男に近付きティエリアと言う存在を産み出し利用した。
酷い話だ。
捨てられる事を運命付けられたティエリア。
まあ、僕ら兄弟はみんなそんなもんだろうけど。
女も金目当てだったし、父親も憂さ晴らしだろうし。
ばしゃん、
ほら、服に飛沫が。
ブリングの話だと、同じマンションに同学年の男の子がいると聞いたのだが。
生憎出掛けたと言ったところか?
話し掛けようか?
このままじゃ、体が冷えるし、濡れて風邪でも引かれたら困る。
「雨の時は、外で遊んじゃ駄目だよ」
ピタリ、ティエリアの動きが止まった。
しかし、こちらに気付いている筈なのに何故だか傘を上げてくれない。
ゆっくりだが、確実に傘を傾けている。
「君のお兄さんは何をしているんだか」
小学校1年生だよ?
誘拐されたらどうするんだ。
傘からやっと赤い瞳が覗いた。
ティエリアが微かに何かを喋った。
「ん?」
目が合った。
どくん、と心臓が大きく打つ。
以前は感じなかったこの心臓の打つ心地。
胸から何かが込み上げて来ている。
今すぐ吐き出したい衝動に駆られるが、何を吐きだしたいか分からない。
「リ…ボ……ンズ?」
微かにだが、確実に僕の名前を呼んだ。
……覚えていてくれた。一回会ったっきり。
てっきり、忘れたのかと思っていた。
たったこれだけの事で、僕はこんなにも喜んでる。
「……」
ティエリアがまた小さな口を小さく開閉する。
「何だい?」
はっとしたティエリアが顔を少し赤らめながら首を左右に振った。
その仕草が、この上なく可愛くて。
頬の筋肉が緩んで行く。
愛想笑いでもなく、自嘲でもなく、相手を見下す笑いでもなく。
なのに、ティエリアは何故だか僕から目を逸らした。
「さ、お部屋に戻ろうか」
もう秋だ。更に今日は雨が降っているから冷える。
「ティエリア?」
久し振りに声に出して呼んだ。
何時も心の中では何度も呼んだが、声に出す事はあまりしない。
決して家の中で話題にならない訳じゃないのに、何故だろうか?
子供の行動は実に訳が分からない。
両耳を何故だか塞いでいる。
特に家に入りたくないと駄々を捏ねている様に見えないし。
「どうしたんだい?」
革靴が濡れる事も気にせず、水溜りの中に一歩踏み出す。
あの日の様に、もう一度手を引いて家に入りたい。
孤児院から彼女を連れ出した日、あの時の手の感触が忘れられない。
彼女の掌を掴んだ筈なのに、僕は何も掴めていなかった。
「…ぅあっ?!」
妹の体が90°から60°、45°、30°、遂に0。
「ティエリア!!」
桃色の傘が宙に投げ出され、ティエリアの体は地面、基水溜りにダイブした。
「ティエリア?! 大丈夫かい?!!」
自分も気付くと傘を投げ出していた。
水溜りの中に大の字でポカン顔。一瞬何が起こっているか分からないのだろう。
「うぇ………」
時間差。
じわり、雨に紛れて。
「怪我無い? ティエリア?」
「……~」
くしゃり、顔が歪んでいく。
ぽろりぽろり、大粒の雨。
これは焦った。
ティエリアを抱えて急いで部屋に戻った。
最後に走ったのは高校の体育かもしれない。
こんな僕、誰にも見られたくない。
鍵は予想通り開いていた。
不用心だと思っている暇がない。
当然急いでお風呂に向かった。
水溜りですっかり汚れた体。
「っくしゅ!」
可愛らしいくしゃみに驚いた。
急いで赤い蛇口を捻る。
「ほら、もっと温度上げないと」
体に触れると冷たくて。
リジェネ、君は何て事をしてくれたんだ。ティエリアをあんな雨の中に。
「寒くない?」
首を振る。それは良かった。が、やはり僕の方を見てくれない。
でも、僕は確信している。
きっと泣いた事を恥じているんだろうと。
泣いていいのに。君はまだまだ小さい子供なんだ。
「もう少し浴びてなさい、バスタオル取って来るからね」
目も合わせない、声も小さくて何を言っているか分からない。
本来なら怒るところだが、ティエリアだと何故か楽しい。面白くて仕方ない。
そして胸が焦がれて行く。
ああ、これは焦がれているのか。
リビングにはティエリアのと思われるバスタオルを見付ける。
ピンクなんてティエリアしかいないだろう。
「ティエリア、出ておいで。体拭いてあげるよ?」
浴室から出てきたティエリアは半歩出た時点で固まった。
「ぁっ……」
急に何かに躊躇している様子。
早く体を拭かないと同じ事だ。
「ティエリア、早くおいで」
「ぅ……」
何か言いたげだが、言う事はないだろう。
構わず手を引き自分の前へ。
頭からバスタオルを被せ、髪をわしゃわしゃ。
目をギュッと瞑って耐える表情はまるで子犬の様だった。
思わず笑ってしまった。
「可愛いね、ティエリアは」
ティエリアはその一言でカーッと赤くなってしまう。
そう、その表情の変化が僕は堪らなく愉快だ。
タオル越しに感じる体の線は予想以上に小さくて内心驚いていた。
体の厚みが違う。
首筋の細さ。
手足の短さ。
タオル一枚で全て隠れてしまう。
可愛いよ、
「何処も彼処も小さくて」
僕にもこんな時期があったと思うと不思議だ。
僕も君ほど純粋だったのだろうか?
「ふっ…、くすぐったい……」
ティエリアの笑顔を見ると何故だか安心出来る。
ふと、洗面台の鏡が目に入り、驚いた。
自分も、こんな笑い方が出来たんだと。
「君は本当に可愛いよ」
人の頭を柄にもなく撫でたい気分だった。愛でたい気分だった。
しかし、ティエリアの頭は僕から逃げた。
顔を赤く染めてしまう、照れ屋な君が可愛くて仕方ない。
「照れ屋さんだね、ティエリアは」
不意を突いてティエリアの小さな手を掴んだ。
ああ、とっても柔らかいよ。
久し振りに訪れたこの家。
大した変化見受けられない。洗濯物がカラフルになった位か。
ブリングは会社に行っただろう。
まあ、彼は別にいなくても構わない。
問題は今回の目的。
目的なのか、こじ付けなのか。
兎に角、きっと彼はこの家の何処かに居る。
彼はインドア。
「……ティエリア、どうかしたのかい…?」
聞こえた声は目的の人物。
彼の自室のドアが少し開いていて、誰かがこちらを覗いていた。
風呂上り姿のティエリアを見て驚いたリジェネは、僕に気付かないのか、ティエリアに走り寄る。
そこまで君も必死なんだ。
ああ、髪の毛もボサボサ。
どうせ君の事だから、深夜までテレビかゲームでもして夜更かししていたんだろう?
今頃起床なんて、どうして君はそう自堕落なんだ。
ティエリアに質問攻めするリジェネは僕にまだ気付いてない。
ここで、確信的な証言が出た。
『それより、リジェネ、寝てなくていいの? 死んじゃうよ?』
それだけでティエリアに何て言ったか把握出来た。
きっと、自分は病気だから、今日一日中寝てなくちゃ死んじゃうー。とか言ったんだろう。
だから、お客が来ても居留守を使えと。
残念、ティエリアは飽きて表に出ていた。
「へぇ、君は死んじゃうのか」
ビク。と固まるリジェネ。ゆっくりと首を上げた。
「あ……リボンズ………おはよー…ございます」
とりあえず笑顔であいさつ。いや、顔が引き攣っている。
「君はこんな小さい妹を放っておいて狸寝入かい?」
ティエリアの行動を予測出来ないのか?
「た…狸寝入りなんて……」
目線を逸らした。狸寝入りじゃないだと?
僕は全てを既に悟っているんだよ?
「大丈夫かい? 体調不良なのかい? なら寝てても良いよ?」
「えー……、いやぁ…。
か…顔洗ってきます……」
小走りで洗面所へ向かうリジェネ。
ティエリアは僕達のやり取りに付いていけないのかポカン顔。
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HN:
兎羽
HP:
性別:
女性
職業:
実家に帰りたい盛り
趣味:
見ての通り
自己紹介:
只今実家を離れて就職中(東北出身)
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
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