こちら「ガンダム00」に心奪われたブログです!
見にくいですが勘弁!愛は本物です。基本、自己満足なんで期待は禁物!
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拍手変えたので(雛祭りネタですが…)、
UPします。
バレンタインにやったヤツの続きです。
ロックオンは独り寂しく居間のテーブルに突っ伏していた。
恋人が風呂にシーツを持って行ってから早5時間。
未だ出てこない。
午前は午前でカーペットを洗うのに全て費やした。
そろそろ18時、ご飯の時間だ。
だがそれ以上に問題がある。
今日が後6時間で終わってしまう。
2月14日が後6時間で終わってしまうのだ。
「何です、だらしが無い」
テーブルに押し付けてるおでこを横に向けると足が見えた。
脇にシーツを抱えたティエリアがやっと戻って来た。
「まだ、チョコ貰ってない……」
朝、軽い喧嘩が起こり一方的に、しかも寝込みを襲われ熱い目に遭った。
貰って来たチョコレートを捨てるどころか、全部溶かして顔に掛けると言う奇行。
俺が望んだのは甘い甘いバレンタインの筈だったのに。
「それはそうと、貴方の鞄から更にチョコを3つ程見つけさせて頂きました」
ドン、と俺の目の前に叩きつける。
ああそうです。ティエリアがいるのにテンションに身を任せ、くれると言うチョコを全部貰って来た俺が悪いんです。
こんな状況下、「チョコ作って下さい」なんて切り出せない。
言った所で「あるじゃないですか」とまたチョコを掛けられるに違いない。
俺はティエリアの作ったチョコが食べたいんだ。
一回溶かして型に流し込んだだけでもいい。
でっかいハート型のチョコ、俺の夢。
「シーツ、白くならなかった」
むくれた顔でバッとシーツを広げてみせる。
中央の茶色い染が事件現場の証拠。
カーペットは少量だった為綺麗に落ちたが、シーツはチョコ13個分のチョコだ。
綺麗に戻る訳が無い。
「いいだろ、それくらい」
「やです。気持ち悪い」
この潔癖症。
この完全完璧主義の恋人に、他の女からのチョコを許す筈が無いとは予想が付いたろうに。
後悔先に立たず。
「つか、ウチ、シーツ1枚しか無いんじゃなかったけ?」
「…そう言えば」
乾いていないシーツに寝るのは流石の俺も嫌。
ハッとする。
ティエリアも濡れたシーツで寝たくない筈。
じゃあ、今日は仕方ないからホテルに泊まろうか?!
「ティエリア。寝るとこないし、今日は…!」
「そうですね、じゃあ貴方はソファーで寝て下さい」
予定変更!
狭いソファーの上で重なり合って寝るのもいい。
それが出来るならチョコなんて要りません!
バレンタインは来年もあるが、このチャンスは次いつあるか分からない。
「あれ…? ティエリアどこ行くの……?」
ティエリアがシーツを干すと、部屋を出て行こうとする。
「何って、ソファーで二人は無理でしょう。今日はアレルヤの所に泊めて貰う」
予定が崩れた。
「ななななっ!」
何で他の男の所に行くんだよ?!
「刹那の所でも良いか」
「何で他の家に泊まるんだよ?!」
それなら俺が泊まった方がマシだ。
「此処は貴方の家だ。普通に考えて僕が出て行くべきだ」
「何で重なって寝るって発想にならないんだよ!」
ティエリアがキョトン顔で首を傾げた。
重なって寝る想像がつかないらしい。
チョコは貰えないし一緒に寝れないし、何て最悪な日なんだ!
今日はバレンタインだ! 恋人たちの日だ!
「もういい」
「ロックオン…?」
「今日は俺が晩飯作るよ。シーツ洗って疲れたろ?」
この怒りを何処にぶつけて良いか分からない。
髪をぐしゃり、ティエリアの頭を撫でるとキッチンへ向かう。
一緒に寝たいと言う気持ちを分かってくれないティエリアと、
俺がチョコを貰って来なければ良かったと言う後悔。
どっちが悪いなんて言えない。
夕ご飯を作りながら考えていた。
嫉妬したんだ、ティエリアは嫉妬してあんな行動をとったんだ。
可愛いもんじゃないか。
ティエリアは俺を嫌う様子が無い。それでいいじゃないか。
あんな酷い仕打ちを受けてもティエリアに嫌気をささない俺も結構な物好きかも。
俺は大人だ。大人になろう。
貰って来たまだ無事なチョコレートを朝のティエリア同様、ドロドロに溶かす。
チョコフォンデュにしてやろう。
俺に本気でくれた女性達を思うと少し胸が痛いが。
きっと喜ぶ。
寝るベッドの件は後でよーく話し合おう。
「ティエリア、飯出来たぞー」
フォンデュはデザート。黙ってて最後に出して驚かせるんだ。
「うわっ!」
部屋に入った拍子にティエリアがケータイを落とす。驚かせてしまったようだ。
誰かと電話してたのだろうか。
まさかもうアレルヤか刹那に連絡を……。
「ロックオン……」
ティエリアは俺が近づいた分後ずさる。
何て意味深な。
「どうしたんだ?」
別に表情は怒っていない筈。現に怒ってない。
「っ……」
震える手がポケットへ。ゆっくり何かを取り出した。
「板チョコ?」
市販で売っている普通の板チョコ。
これまた震える指でゆっくりと銀紙を剥がす。
全て剥がし終わるまで一部始終をずっとじっと見ていた。何をするのだろうと。
「ロックオン……?」
また名前を呼ばれた。
さっきまで後ずさっていた癖に、急に俺の前まで小走りで駆けて来た。
すると、板チョコを一枚、丸々咥え、
「ん」
顔を突き出すのだ。
「んっ!」
行動を起こさないロックオンに痺れを切らした様に、くいっと差し出す。
顔は真っ赤。睨む目は潤んでて迫力が無い。
相手が何を求めているかなんて、好きなんだから直ぐに分かった。
「いただきます……」
肩に手を添えるとビクッと肩を跳ねらせる。
仕方ないだろ? 俺の方が身長高いんだから。
自分の服の裾をぎゅっと掴む手が見えて微笑ましいと思う傍ら、身体が熱くなる。
この光景には覚えがあった。ポッキーゲーム。
しかしこれは少しバランスが悪い。咥えるだけで精一杯。
パキンと噛み砕けば咥え落としてしまいそう。
上目使いのティエリアは碧い瞳をひたすら見詰める。
俺に噛めと目が訴えるがどうしろと。
舌先に当たるチョコが甘いんだろうが、味を判別する余裕が無かった。
いつまでもこうしてる訳にもいかない。
ティエリアは多分俺が食べるまで本当にずっとこうしているだろう。
歯に力を入れると、体温で溶けたチョコにゆっくりと歯が入り込む。
パッ…キン
「んっ」
折れなかった。ティエリアの口には俺の歯形が付いたチョコレートが未だある。
このチョコを飲み込んだら二口目に移らなければならない。
また反対側の端を咥え、再び歯で割ろうとするが、
「あっ!」
ずっと口に含んでいたティエリア側の端は溶けていて、次の衝撃に耐えられなかった。
唇を綺麗にスライドして床に落ちて行く。
「ちょこっ!」
落ちないようにする為には二つの方法がある。
素早く手でキャッチするか、落ちる隙間を埋めるか。
ティエリアは後者の方法を取った。
ロックオンの体に抱きついた事により、落ちるチョコを挟んだ。
「はぁー」
安堵の息を吐いたのはロックオン。
二人くっ付いたままゆっくり床に座り体を離すとポロリ、隙間から落ちたチョコが膝の上に着地した。
無言のまま、ティエリアはチョコを拾うと、何を思ったかまた咥えようとする。
「や、普通に食べようよ」
素早く突っ込むとティエリアは顔を更に赤く染め、俯いてしまった。
良く考えれば、実に奇妙な光景だったと思う。
「どうしたんだ? 急に」
それは何処からそのチョコを出したのかと言う疑問と、どうしてこんな行動をしたのかと言う質問、どちらも含まれている。
「貴方を…怒らせてしまったから……」
「俺が?」
「どうしたら良いかと、スメラギに聞いたんだ」
さっきのケータイは、スメラギに電話をかけていたのか。
頭の中で、全て繋がった。
「で、これを伝授されたと……」
「チョコは、今日用に少し買ってあったんだ……、でも朝、一緒に溶かしてしまって……これが最後の一枚なのです」
板チョコ一枚しかない。これだけじゃ何も作れない。どうすれば良いか聞くとさっきのを教えられたとか。
「落としてしまいました……いらないですね」
やっと気が付いた。
ティエリアは俺が朝の事をまだ怒ってると思っていたらしい。相当しょ気ている。
あんな毅然とした態度でいた為、気にしてないと思ったら。
天の邪鬼の向こう側には、いつも後悔する自分がいると知っている癖に。
なら、俺が導いてやる。
「ティエリア、何でチョコに溝が掘ってるか知ってるか?」
「はい?」
握りしめるチョコを奪う。
「ちゃんと一口サイズに出来るようにだ」
パキン、と溝に沿ってチョコを割る。そんな事、ティエリアが知らない訳が無いのだが何も言わずにその様子を見る。
そんな様子のティエリアを見てロックオンは笑う。
「んっ」
一口サイズのチョコを咥え、ティエリアに顔を近付けた。
当然、さっき同じ事をしていたティエリアはロックオンが何をしろと言っているのか理解できる。
また身長差だ。
ティエリアが腰を少し浮かせ、顔を近付ける。
膝の上に、ティエリアの手が乗り、前のめりの形になる。
緊張に震えるティエリアの口が、顔が目の前に。
「ふぐぅ」
馬鹿か。目を瞑るから距離感が掴めず、自ら俺の顔面に当たりに来た。
当然当たる部位は口同士。
軽く噛んでいたチョコを離すとティエリアは直ぐさま顔を離した。
モグモグと涙目になりながらチョコを食す。
味わっている様子は見受けられない。
「はい、今度はティエリアの番」
驚いたティエリアが勢いよく顔を上げる。
「バレンタインだろ?」
一欠け、ティエリアの手を引っ張り、手の平に乗せてやった。
「っぅ……」
もう涙が零れそうなほど溜まっている。
さっきの事故的なキスが相当恥ずかしかったのだろう、咥えた場所はチョコの端っこ。
落ちないギリギリライン。
引く腰に手を回すと驚いて見上げるティエリアと目が合った。
逃げ腰なんてさせない。
それでも後ろへ下がってく頭も後ろから押さえると遂に緊張はマックス。
固まったまま動かなくなってしまった。
開いたままの瞳をじっくり見たままチョコごとティエリアの唇にかぶりついた。
「っ~…!」
ボロッとティエリアの涙が零れた瞬間が良く分かった。
いい加減キスと言うものに慣れて欲しい。
可愛いが、毎回泣かれちゃ心が痛む。
次々零れる涙なんて拭う余裕も無いティエリアの代わりに自分の親指で拭ってやった。
甘い。ティエリアから口移しで貰ったチョコは酷く甘い。
チョコを噛みながら、次の一口をティエリアの手ではなく、まどろっこしいので口に直接咥えさせた。
「んんー!」
まどろっこしいとか言ってるが、本当は余裕が無いだけ。
またティエリアごとチョコにかぶりつく。
そろそろ次の段階に行きたいなと思っていると、なんと相手から仕掛けて来た。
「ろっく……」
咥えたチョコを、わざわざティエリアの舌で運んでくれた。
以心伝心、タイミングも分かってくれている辺り、恋人同士っぽい。
「あ…あま……」
ティエリアが甘いチョコに酔って来た。
次を急かすようにロックオンの手首を掴む。
「ロックオンから欲しいです……」
「了解。ったく、いつもこれくらい素直ならいいのに」
「だって、そんな…恥ずかしい……」
可愛すぎる。
顎に手を添え、くいっと上げるとティエリアは早くくれと小さく口を開けてみせた。
恥ずかしい以上に、俺に甘えたいらしい。
「っはぁ……甘いです……」
「俺も、甘い」
もう何口目か分からない。ティエリアが甘くてしょうがない。
早く次の一口を……、と手の平を探るが、何も掴めない。
「ってあれ?」
チョコが無くなってしまった。
「ロックオン?」
「残念、もう無いや」
笑って見せると、ティエリアはとても不満そうな表情を返してよこした。
「一緒に溶かさなきゃ良かった……」
朝の事を言ってるらしい。
じゃあ朝のチョコレートには、俺が貰って来た分とティエリアが作ろうとした分だったらしい。
そう思うと、もっと勿体なく感じて来た。
ティエリアは酷く項垂れ、今度は羞恥の涙ではなく、後悔の涙を流そうとする。
この涙はとても苦手だ。
「あ、そうだ」
ロックオンはすっかり忘れていた事を思い出した。
自分達は晩ご飯を食べようとしていたんだ。
「デザートに、チョコフォンデュ食べようと思っていたんだけど……」
ティエリアは一瞬ポカンとするが、直ぐに俺が何を言いたがってるか分かり、笑顔に戻る。
「食べますっ!」
「おう!」
バレンタインディ、第二陣。
やっぱりバレンタインはこうじゃなきゃ。
幸せすぎる。多分、世界中の誰よりも甘いバレンタインを過ごしているに違いない。
「パッピーバレンタイン、ティエリア」
「月曜日、またチョコ貰って来たらタダじゃおきませんから」
「……はい」
因みに今日のベッドの件を言っておくと、
新しいシーツを買いに行けばいいと気が付いた俺達は、チョコレートまみれの服を急いで脱ぎ捨ててデパートへ向かった。
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拍手して下さった方、ありがとうございました!!
UPします。
バレンタインにやったヤツの続きです。
ロックオンは独り寂しく居間のテーブルに突っ伏していた。
恋人が風呂にシーツを持って行ってから早5時間。
未だ出てこない。
午前は午前でカーペットを洗うのに全て費やした。
そろそろ18時、ご飯の時間だ。
だがそれ以上に問題がある。
今日が後6時間で終わってしまう。
2月14日が後6時間で終わってしまうのだ。
「何です、だらしが無い」
テーブルに押し付けてるおでこを横に向けると足が見えた。
脇にシーツを抱えたティエリアがやっと戻って来た。
「まだ、チョコ貰ってない……」
朝、軽い喧嘩が起こり一方的に、しかも寝込みを襲われ熱い目に遭った。
貰って来たチョコレートを捨てるどころか、全部溶かして顔に掛けると言う奇行。
俺が望んだのは甘い甘いバレンタインの筈だったのに。
「それはそうと、貴方の鞄から更にチョコを3つ程見つけさせて頂きました」
ドン、と俺の目の前に叩きつける。
ああそうです。ティエリアがいるのにテンションに身を任せ、くれると言うチョコを全部貰って来た俺が悪いんです。
こんな状況下、「チョコ作って下さい」なんて切り出せない。
言った所で「あるじゃないですか」とまたチョコを掛けられるに違いない。
俺はティエリアの作ったチョコが食べたいんだ。
一回溶かして型に流し込んだだけでもいい。
でっかいハート型のチョコ、俺の夢。
「シーツ、白くならなかった」
むくれた顔でバッとシーツを広げてみせる。
中央の茶色い染が事件現場の証拠。
カーペットは少量だった為綺麗に落ちたが、シーツはチョコ13個分のチョコだ。
綺麗に戻る訳が無い。
「いいだろ、それくらい」
「やです。気持ち悪い」
この潔癖症。
この完全完璧主義の恋人に、他の女からのチョコを許す筈が無いとは予想が付いたろうに。
後悔先に立たず。
「つか、ウチ、シーツ1枚しか無いんじゃなかったけ?」
「…そう言えば」
乾いていないシーツに寝るのは流石の俺も嫌。
ハッとする。
ティエリアも濡れたシーツで寝たくない筈。
じゃあ、今日は仕方ないからホテルに泊まろうか?!
「ティエリア。寝るとこないし、今日は…!」
「そうですね、じゃあ貴方はソファーで寝て下さい」
予定変更!
狭いソファーの上で重なり合って寝るのもいい。
それが出来るならチョコなんて要りません!
バレンタインは来年もあるが、このチャンスは次いつあるか分からない。
「あれ…? ティエリアどこ行くの……?」
ティエリアがシーツを干すと、部屋を出て行こうとする。
「何って、ソファーで二人は無理でしょう。今日はアレルヤの所に泊めて貰う」
予定が崩れた。
「ななななっ!」
何で他の男の所に行くんだよ?!
「刹那の所でも良いか」
「何で他の家に泊まるんだよ?!」
それなら俺が泊まった方がマシだ。
「此処は貴方の家だ。普通に考えて僕が出て行くべきだ」
「何で重なって寝るって発想にならないんだよ!」
ティエリアがキョトン顔で首を傾げた。
重なって寝る想像がつかないらしい。
チョコは貰えないし一緒に寝れないし、何て最悪な日なんだ!
今日はバレンタインだ! 恋人たちの日だ!
「もういい」
「ロックオン…?」
「今日は俺が晩飯作るよ。シーツ洗って疲れたろ?」
この怒りを何処にぶつけて良いか分からない。
髪をぐしゃり、ティエリアの頭を撫でるとキッチンへ向かう。
一緒に寝たいと言う気持ちを分かってくれないティエリアと、
俺がチョコを貰って来なければ良かったと言う後悔。
どっちが悪いなんて言えない。
夕ご飯を作りながら考えていた。
嫉妬したんだ、ティエリアは嫉妬してあんな行動をとったんだ。
可愛いもんじゃないか。
ティエリアは俺を嫌う様子が無い。それでいいじゃないか。
あんな酷い仕打ちを受けてもティエリアに嫌気をささない俺も結構な物好きかも。
俺は大人だ。大人になろう。
貰って来たまだ無事なチョコレートを朝のティエリア同様、ドロドロに溶かす。
チョコフォンデュにしてやろう。
俺に本気でくれた女性達を思うと少し胸が痛いが。
きっと喜ぶ。
寝るベッドの件は後でよーく話し合おう。
「ティエリア、飯出来たぞー」
フォンデュはデザート。黙ってて最後に出して驚かせるんだ。
「うわっ!」
部屋に入った拍子にティエリアがケータイを落とす。驚かせてしまったようだ。
誰かと電話してたのだろうか。
まさかもうアレルヤか刹那に連絡を……。
「ロックオン……」
ティエリアは俺が近づいた分後ずさる。
何て意味深な。
「どうしたんだ?」
別に表情は怒っていない筈。現に怒ってない。
「っ……」
震える手がポケットへ。ゆっくり何かを取り出した。
「板チョコ?」
市販で売っている普通の板チョコ。
これまた震える指でゆっくりと銀紙を剥がす。
全て剥がし終わるまで一部始終をずっとじっと見ていた。何をするのだろうと。
「ロックオン……?」
また名前を呼ばれた。
さっきまで後ずさっていた癖に、急に俺の前まで小走りで駆けて来た。
すると、板チョコを一枚、丸々咥え、
「ん」
顔を突き出すのだ。
「んっ!」
行動を起こさないロックオンに痺れを切らした様に、くいっと差し出す。
顔は真っ赤。睨む目は潤んでて迫力が無い。
相手が何を求めているかなんて、好きなんだから直ぐに分かった。
「いただきます……」
肩に手を添えるとビクッと肩を跳ねらせる。
仕方ないだろ? 俺の方が身長高いんだから。
自分の服の裾をぎゅっと掴む手が見えて微笑ましいと思う傍ら、身体が熱くなる。
この光景には覚えがあった。ポッキーゲーム。
しかしこれは少しバランスが悪い。咥えるだけで精一杯。
パキンと噛み砕けば咥え落としてしまいそう。
上目使いのティエリアは碧い瞳をひたすら見詰める。
俺に噛めと目が訴えるがどうしろと。
舌先に当たるチョコが甘いんだろうが、味を判別する余裕が無かった。
いつまでもこうしてる訳にもいかない。
ティエリアは多分俺が食べるまで本当にずっとこうしているだろう。
歯に力を入れると、体温で溶けたチョコにゆっくりと歯が入り込む。
パッ…キン
「んっ」
折れなかった。ティエリアの口には俺の歯形が付いたチョコレートが未だある。
このチョコを飲み込んだら二口目に移らなければならない。
また反対側の端を咥え、再び歯で割ろうとするが、
「あっ!」
ずっと口に含んでいたティエリア側の端は溶けていて、次の衝撃に耐えられなかった。
唇を綺麗にスライドして床に落ちて行く。
「ちょこっ!」
落ちないようにする為には二つの方法がある。
素早く手でキャッチするか、落ちる隙間を埋めるか。
ティエリアは後者の方法を取った。
ロックオンの体に抱きついた事により、落ちるチョコを挟んだ。
「はぁー」
安堵の息を吐いたのはロックオン。
二人くっ付いたままゆっくり床に座り体を離すとポロリ、隙間から落ちたチョコが膝の上に着地した。
無言のまま、ティエリアはチョコを拾うと、何を思ったかまた咥えようとする。
「や、普通に食べようよ」
素早く突っ込むとティエリアは顔を更に赤く染め、俯いてしまった。
良く考えれば、実に奇妙な光景だったと思う。
「どうしたんだ? 急に」
それは何処からそのチョコを出したのかと言う疑問と、どうしてこんな行動をしたのかと言う質問、どちらも含まれている。
「貴方を…怒らせてしまったから……」
「俺が?」
「どうしたら良いかと、スメラギに聞いたんだ」
さっきのケータイは、スメラギに電話をかけていたのか。
頭の中で、全て繋がった。
「で、これを伝授されたと……」
「チョコは、今日用に少し買ってあったんだ……、でも朝、一緒に溶かしてしまって……これが最後の一枚なのです」
板チョコ一枚しかない。これだけじゃ何も作れない。どうすれば良いか聞くとさっきのを教えられたとか。
「落としてしまいました……いらないですね」
やっと気が付いた。
ティエリアは俺が朝の事をまだ怒ってると思っていたらしい。相当しょ気ている。
あんな毅然とした態度でいた為、気にしてないと思ったら。
天の邪鬼の向こう側には、いつも後悔する自分がいると知っている癖に。
なら、俺が導いてやる。
「ティエリア、何でチョコに溝が掘ってるか知ってるか?」
「はい?」
握りしめるチョコを奪う。
「ちゃんと一口サイズに出来るようにだ」
パキン、と溝に沿ってチョコを割る。そんな事、ティエリアが知らない訳が無いのだが何も言わずにその様子を見る。
そんな様子のティエリアを見てロックオンは笑う。
「んっ」
一口サイズのチョコを咥え、ティエリアに顔を近付けた。
当然、さっき同じ事をしていたティエリアはロックオンが何をしろと言っているのか理解できる。
また身長差だ。
ティエリアが腰を少し浮かせ、顔を近付ける。
膝の上に、ティエリアの手が乗り、前のめりの形になる。
緊張に震えるティエリアの口が、顔が目の前に。
「ふぐぅ」
馬鹿か。目を瞑るから距離感が掴めず、自ら俺の顔面に当たりに来た。
当然当たる部位は口同士。
軽く噛んでいたチョコを離すとティエリアは直ぐさま顔を離した。
モグモグと涙目になりながらチョコを食す。
味わっている様子は見受けられない。
「はい、今度はティエリアの番」
驚いたティエリアが勢いよく顔を上げる。
「バレンタインだろ?」
一欠け、ティエリアの手を引っ張り、手の平に乗せてやった。
「っぅ……」
もう涙が零れそうなほど溜まっている。
さっきの事故的なキスが相当恥ずかしかったのだろう、咥えた場所はチョコの端っこ。
落ちないギリギリライン。
引く腰に手を回すと驚いて見上げるティエリアと目が合った。
逃げ腰なんてさせない。
それでも後ろへ下がってく頭も後ろから押さえると遂に緊張はマックス。
固まったまま動かなくなってしまった。
開いたままの瞳をじっくり見たままチョコごとティエリアの唇にかぶりついた。
「っ~…!」
ボロッとティエリアの涙が零れた瞬間が良く分かった。
いい加減キスと言うものに慣れて欲しい。
可愛いが、毎回泣かれちゃ心が痛む。
次々零れる涙なんて拭う余裕も無いティエリアの代わりに自分の親指で拭ってやった。
甘い。ティエリアから口移しで貰ったチョコは酷く甘い。
チョコを噛みながら、次の一口をティエリアの手ではなく、まどろっこしいので口に直接咥えさせた。
「んんー!」
まどろっこしいとか言ってるが、本当は余裕が無いだけ。
またティエリアごとチョコにかぶりつく。
そろそろ次の段階に行きたいなと思っていると、なんと相手から仕掛けて来た。
「ろっく……」
咥えたチョコを、わざわざティエリアの舌で運んでくれた。
以心伝心、タイミングも分かってくれている辺り、恋人同士っぽい。
「あ…あま……」
ティエリアが甘いチョコに酔って来た。
次を急かすようにロックオンの手首を掴む。
「ロックオンから欲しいです……」
「了解。ったく、いつもこれくらい素直ならいいのに」
「だって、そんな…恥ずかしい……」
可愛すぎる。
顎に手を添え、くいっと上げるとティエリアは早くくれと小さく口を開けてみせた。
恥ずかしい以上に、俺に甘えたいらしい。
「っはぁ……甘いです……」
「俺も、甘い」
もう何口目か分からない。ティエリアが甘くてしょうがない。
早く次の一口を……、と手の平を探るが、何も掴めない。
「ってあれ?」
チョコが無くなってしまった。
「ロックオン?」
「残念、もう無いや」
笑って見せると、ティエリアはとても不満そうな表情を返してよこした。
「一緒に溶かさなきゃ良かった……」
朝の事を言ってるらしい。
じゃあ朝のチョコレートには、俺が貰って来た分とティエリアが作ろうとした分だったらしい。
そう思うと、もっと勿体なく感じて来た。
ティエリアは酷く項垂れ、今度は羞恥の涙ではなく、後悔の涙を流そうとする。
この涙はとても苦手だ。
「あ、そうだ」
ロックオンはすっかり忘れていた事を思い出した。
自分達は晩ご飯を食べようとしていたんだ。
「デザートに、チョコフォンデュ食べようと思っていたんだけど……」
ティエリアは一瞬ポカンとするが、直ぐに俺が何を言いたがってるか分かり、笑顔に戻る。
「食べますっ!」
「おう!」
バレンタインディ、第二陣。
やっぱりバレンタインはこうじゃなきゃ。
幸せすぎる。多分、世界中の誰よりも甘いバレンタインを過ごしているに違いない。
「パッピーバレンタイン、ティエリア」
「月曜日、またチョコ貰って来たらタダじゃおきませんから」
「……はい」
因みに今日のベッドの件を言っておくと、
新しいシーツを買いに行けばいいと気が付いた俺達は、チョコレートまみれの服を急いで脱ぎ捨ててデパートへ向かった。
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拍手して下さった方、ありがとうございました!!
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HN:
兎羽
HP:
性別:
女性
職業:
実家に帰りたい盛り
趣味:
見ての通り
自己紹介:
只今実家を離れて就職中(東北出身)
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
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