こちら「ガンダム00」に心奪われたブログです!
見にくいですが勘弁!愛は本物です。基本、自己満足なんで期待は禁物!
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文字数を5000、5000に分けたんです。
まあ、久し振りに妄想してスッキリした。
半分にしたけど、コピペ上手くいってるのかな…?
確認めんどく(ry
職員室に行き、事情を話すと快く貸してくれた。
懐かしい。
強いて言うなら、壁の汚れが当時より酷くなった位か。
「開きました、どうぞ」
開けるとそこは普通の教室の半分しかない狭い部室。
隅には予備用の机と椅子が山積み。
掲示板用の小さな黒板。
少し凹んだロッカー。
真ん中には俺達が座っていた長テーブルとパイプ椅子。
「変わんねー」
「本当ですか?」
変わったのは机の上に見覚えのない予備プリント。
当時は当時で俺達に配られたプリントがあったが。
「うぉ、マジか?!」
「どうしましたか?」
「賞採った写真とかまだあんじゃんか!」
壁に取り付けられた時計の隣には額縁が2つ。
一つは茶ばんだ賞状。もう一つは俺が当時初めて賞を採った時、応募した写真だ。
「それ、貴方が撮ったんですか?」
「おう、賞採った時のだ。これで俺調子付いたんだ」
なんてな、と笑って見せた。
壁から額を外し、長テーブルに置く。
あれ以来そのまま放置されていたのだろう、ばふっと埃が舞う。
こほり、と隣に居る彼女は咳込んだ。
徐に写真を取り出す。
「何ですか?」
「隠したんだよ。当時、みんなで集合写真撮ってさ」
まだあった。
当時、悪戯目的でこの写真の裏に自分達の集合写真を入れたのだ。
俺達が撮ったんだ。と永遠に知らしめたかった。
写真には幼い自分が写っている。
「これが俺」
「確かに、そうですね」
本当に卒業生だったんだ。と完全に納得してくれた様子。
「この頃の俺は若かったなー」
「貴方今幾つですか?」
「24」
「まだ全然じゃないですか」
懐かしい面子を暫く眺めていると、横から覗き込んでいた彼女は俺が額から出した写真をじっと見詰めていた。
自分の写真をそんな真剣に見詰めていると思うと、恥ずかしくなって来た。
「正直さ、今もそれの何処が良いのか分からないんだよ」
「え?! でも、今でも賞を取る程の腕前なのでしょう?!」
「賞ってもアマチュアだけどな。
今はさ、ある程度の知識なら独学で覚えたけど当時は本当に適当。インスピレーションってか、行き当たりバッタリ」
「そうだったんですか……」
原寸より引き伸ばされた写真。
朝礼の時、みんなの前で表彰された時の優越感と喜び。
高校の時の一番の思い出かもしれない。
「実はですね、前に一回、道具を仕舞いにここの準備室に入った事があるんです。
その時にこの写真がたまたま目に入って、ずっと気になっていたんです」
「へー、そうなんだ」
「誰が撮ったんだろうって。今は写真部活動停止していますから、もうこの学校に居ないんだろうなと思ってましたし」
「確かに俺の時も殆ど身内、クラスで仲良いもん同士だったからな」
「好きなんです」
「ふーん………。
―――好き?!!」
「惚れてたんです、この写真に。この写真、きっと屋上から撮ったのでしょう?」
確かに、当時カメラを首から提げ、みんなで屋上に上がった。
放課後な時間帯故、当然屋上からは夕焼けが見えた。
赤い空の上には夜が迫り、藍色と朱色が混ざり合っていて。
その瞬間を捉えた写真だった。
「今は鍵が掛けられて立ち入り禁止なんです。だから、半分憧れかもしれませんね」
顔が熱くなる。
目の前で俺の写真が良いとか、そう言われると酷く照れた。
褒めると言うより、好きだとか、惚れただとか。まるで恋の告白の様ではないか。
そう言っている時の彼女の表情が堪らなかった。
一生懸命で。
植物園で会った時はあんな目で俺を見てた癖に。
キラキラした瞳があまりにも綺麗で。
また写真を撮りたくて腕が疼く。
心躍った。
俺の作品を此処が良いとか、悪いとか言わずに、純粋に「惚れた」の一言。
周りの大人からそんな一言、貰った事無かった。
「来いよ」
「はい?」
「実はな、俺の時も屋上、立ち入り禁止だったんだ」
「え?! そうだったんですか?!」
「教えてやるよ、鍵の開け方」
「な、何言って…!」
「鍵変わってなかったらの話だけど」
時間帯的にはまだまだ明るいが、青空もまた絶景だろう。
3階のもっと上まで一気に駆け上がった。
屋上の一歩手前、立ち入り禁止と書かれた看板が提げられたドアノブに手を掛けた。
「ヘアピンかなんか持ってる?」
「あ、あります!」
「ありがと。
こんな玩具みたいな鍵、簡単だっつーの………、ほら、開いた」
鍵はやはり変わっていなかった。
嗅ぎ付かれて鍵を強化されたら困るから、律儀に帰る時は掛け直していたのが幸いした。
「手慣れていますね……」
「おう、常習犯だったからな」
彼女はポカンとしていた。
まあ、この進学校でこんな馬鹿な真似する奴は今も昔もそういないのだろう。
珍しそうに俺を見ていた。
「先生にチクらないでな?」
久し振りに開けると少し扉が重かった。
ぎぎっと軋む音が大きくなった気がする。
扉から一気に風が流れ込み、長めの前髪が舞う。
目に入り痛い。
「凄いです!」
髪型が崩れる事などお構いなく、後ろにいた彼女は俺より先に屋上へ出た。
突風でバレるかも知れない。
急いで扉を閉めた。
「絶景絶景」
フェンスギリギリにいる彼女の隣に立った。
「凄いですね、街が一望出来ます!」
「まあ、マンションには劣るけど、一応3階建てだからな、此処の高校」
強風なのにスカートを押さえ様ともしない。
ギリ見えないからいいけどさ。
キラキラした瞳は年相応。
子供だった。
「笑うと可愛いなー」
「何か言いました?」
「んや」
この風景も懐かしい。
先生にあの写真の撮影場所が此処だとばれなくて良かった。
ひょっとして分かってて見逃してくれたのかな?
「ロックオンさん」
考えていると、振り向いた彼女がいつの間にか風景から俺を見ていた。
「さんはいらないよ……ってか、それペンネーム……」
「ではロックオン、此処から撮ったのですか?」
「まあ、だいたい此処等辺に立ったかな?」
へー、とその場所に立って再び風景を見る。
子供らしい行動を見てると飽きない。
当時みたいにフェンスに背を預け、空を仰いだ。そのままズルズル地面に座る。
「なあ、お前何であそこに寝ていたんだ?」
「あそこ?」
「植物園。寝てただろ?」
「ああ……、僕、水やるの好きなんです」
「へぇ」
校長が良く水を撒く姿を授業中見た事がある。
「特に係りと言う訳ではないのですが……、そう言う事をやるのが好きなので、たまにやらせて頂いてるんです」
「で、その内寝ちゃったと」
「わ、笑っても構いません。気持ち良かったんですよ。土曜日とか、全然人来ないじゃないですか、あそこ」
「じゃあ良く寝てるの?」
「……」
口を尖らせた表情が本当に可愛らしかった。
「やー、本当にびっくりしたからなー。あそこでサボる奴はいたけど、お前さんみたいな優等生っぽい子が寝てるもんだから」
まあ、サボってたメンバーに俺は入っていた訳だが。
しかし、思い返すと一見不釣り合いに見える優等生の居眠りだが、固定概念を取っ払えば実にナチュラル。
森で眠る美少女。いや妖精か?
思い出すとまた顔が熱くなった。
ずっと写真を撮っていたかった。
人を撮るのはあまりやらない方。
正直苦手で滅多に撮らないのだが、彼女を前にすると自然と指が動いた。
自分でも不思議だった。
まるでこれは。
「ふふっ、あははっ!」
急に笑い出すものだから俺は驚いた。
さっきまであんなにもムスッとした表情をしていたのに。
「な、何笑ってんだよ?」
「悪い事したの、初めてです」
「は?」
「いつも兄さんや姉さんの目があるから。こんな悪い事出来ないんです」
悪い事。
確かに立ち入り禁止区域に入るのは悪い事だ。
でも、これは悪い事言うより悪戯に近い気がする。
「お兄さんとお姉さんがいるのか?」
「ええ。僕が末っ子です」
「てか、お前女なのに僕って言うんだな」
「それもよく叱られます。女らしくしなさいって。
でも無理な話なんですよ! 姉さんより兄さんの方が多いのですから、必然的にそうなりますよ!」
プンプン怒りながら俺の横に座る。
思ったより、感情豊かで良く喋る子だ。
典型的なクラス委員長タイプだと思っていたのだが。
「お前さん、案外お喋りさんだな?」
「えっ…?」
指摘すると、相手の方が大きいリアクションを取る。
「ぼ、僕、どうして見ず知らずの貴方に……」
口を押さえた。
「ん?」
「貴方がお喋りなんですよ。貴方に釣られて僕も話してしまう」
膝を抱えて顔を隠す。
「えー? そうか? お前からも結構話し掛けてんぞ?」
「そ、そんな筈ないっ! 絶対貴方がっ…!」
顔を真っ赤にして話す。
実は恥ずかしがり屋なのか? なんて思った。
「貴方が……綺麗だとか、可愛いとか、煽てるから……」
か細い声が届いた。ほぼ独り言。
聞こえた時点で独り言ではなくなるが。
「え? お前さん、何かのモデルとかしてないの?」
「なっ、僕がですか?! お世辞も大概に…!」
「いや! お世辞とか全然……、ってか、お前モデルとかじゃないの?!」
てっきりそんな事をしてるのかと考えていた。
「もぅ……、そうやって、僕をまた……」
俯くが、耳までは隠せない。赤い耳が見えた。
(うわー、可愛いの)
今時こんな純粋な女子高生もいたもんか。
「悪い、気分悪くしたなら謝るよ」
「いいです、別に」
「……」
「……」
暫く無言が続いた。
「っくしゅ」
沈黙を割いたのは彼女のくしゃみだった。
「流石に夕方になって来たな。5時か、確かにそうか」
2時に学校に来てもう3時間経った。
あっと言う間だ。
風も冷たくなって来た。
そろそろ戻らなくては。
「夕方……」
勢い良く立ち上がり、何かを探す様に辺りを見渡した。
「見て下さい! ロックオン! あの時と同じではないですか?!」
指を刺す方向には赤い太陽。迫る夜。
「おー、本当だ。相も変わらず綺麗なもんだぜ」
「写真で見て以来、ずっと生で見たかったんだ」
紫色の髪が夕日で変色していた。
昼間とは違う輝きを放つ。
「この風景を生で見て、そして撮影した貴方がずっと羨ましかった」
「良かったな、見れて」
「はいっ!」
振り向き様の笑顔と来たら。
髪も去る事ながら、赤い目も夕日に良く映えた。
綺麗な金色色に見える。
「あ、また写真撮ろうかな?」
「良いですね、きっと夕焼けは毎日微妙に違う物でしょうから」
横に一歩ずれた。
「動くな」
ピタリと固まった。
「お前と一緒に撮りたいな、夕日」
「はっ…?! 何言ってるんですか?!!」
夕日の助けもあって、顔は通常の倍赤くなる。
「俺、お前が好きなんだよ」
「はぁあああ?!」
あのドキドキのお返しとばかしに彼女を攻めた。
「本当に写真映え半端無い。どんな綺麗な花もお前と一緒に写すとな、引き立て役にしかならないんだよ。
さっき写してる時に思ったんだけどさ」
「あっ、あの時…!」
初対面の時の事を思い出したのか、焦りを見せる。
寝顔を撮られたのだったと。
「頼むよ! 俺人撮りたいなんて久し振りでさ、俺の趣味に付き合ってくれ!
屋上まで連れて来たお礼だと思ってさ!」
必死過ぎる自分に笑えた。
無性に撮りたい。
こんなチャンス二度とない。
このロケーションと彼女、これから一生ない気がした。
「お…、思い出の一枚、と言う事で……」
「おっ! ありがとさん!」
【何でこんなに喜んでいるんだ、僕は】
彼女の心の声など聞こえる筈もなく。
(やばいな。これは良いモデルだからこんなに嬉しんだか、この子がこんなにも可愛らしいからドキドキしてるのか)
そこでふと思う。
「あれ? 名前まだ聞いてなかったよな?」
「あ…、そ…でしたね……」
「名前は?」
「………ティエリア」
「へー、顔と良く合った綺麗な名前だな!」
「っ! ……そんなに煽てても、何も出ませんからね?」
言葉とは反対に、ティエリアは緩やかに笑った。
最高の一枚、頂きました。
もう少し学校に残ると言うティエリアは校門の前まで俺を見送りに来てくれた。
「今日は楽しかった、ありがとうティエリア」
「いいえ、僕こそ。僕のわがままで屋上の鍵を開けさせてしまって」
「いや、あれは俺が勝手にやった事だし」
「寝顔、撮った事チャラにして上げます。人を撮る練習代、チャラです」
あー…、そう言えば言い訳でそんな事を言った気もする。
「僕、こんなに人と話したの初めてです。きっと貴方が……」
「ん?」
「兎に角、初めて非行に走って、楽しかったです」
あれで、非行ね……。
「コンテスト、入賞する事を願っています、ロックオン」
あ、そうだ。
俺コンテスト目的だったっけ?
忘れた自分、何と馬鹿だ。
「本名はニール・ディランディって言うんだ」
「ニール……、分かりましたロックオン!」
「いや、だからニールだって」
「覚えましたよロックオン」
「……もうロックオンで良いよ」
こいつ、若干天然入ってんな。
「現像したら比較してみたいな」
「ああ、昔の奴とですか?」
「そ。どれ位変わったか……」
きっと、これの方が数段良いだろうけど。
「なあ、お前の電話番号、聞いてい?
一緒に見ようぜ?」
全てはある日の夕方から始まった。
「とはい言いつつも、寝顔の盗撮、罪悪感ありまくりだなー……」
パソコンで今日撮った写真を見ていた。
夢中だったとは言え、この枚数。
相手が天然ちゃんで助かった。
「一応、隠しフォルダに………うぉ?!!」
一枚、明らかに構図が可笑しい一枚があって。
それを拡大すると白と肌色の写真。
「あ……あんの気のか……」
転びかけて手を突いたあの時の一枚。
どうしようかと考えた挙句、隠しフォルダの中に、更に隠しフォルダを作る事でセキュリティを強化する事に至った。
-------------------------
≪考えてる私は楽しかったですー≫
まあ、久し振りに妄想してスッキリした。
半分にしたけど、コピペ上手くいってるのかな…?
確認めんどく(ry
職員室に行き、事情を話すと快く貸してくれた。
懐かしい。
強いて言うなら、壁の汚れが当時より酷くなった位か。
「開きました、どうぞ」
開けるとそこは普通の教室の半分しかない狭い部室。
隅には予備用の机と椅子が山積み。
掲示板用の小さな黒板。
少し凹んだロッカー。
真ん中には俺達が座っていた長テーブルとパイプ椅子。
「変わんねー」
「本当ですか?」
変わったのは机の上に見覚えのない予備プリント。
当時は当時で俺達に配られたプリントがあったが。
「うぉ、マジか?!」
「どうしましたか?」
「賞採った写真とかまだあんじゃんか!」
壁に取り付けられた時計の隣には額縁が2つ。
一つは茶ばんだ賞状。もう一つは俺が当時初めて賞を採った時、応募した写真だ。
「それ、貴方が撮ったんですか?」
「おう、賞採った時のだ。これで俺調子付いたんだ」
なんてな、と笑って見せた。
壁から額を外し、長テーブルに置く。
あれ以来そのまま放置されていたのだろう、ばふっと埃が舞う。
こほり、と隣に居る彼女は咳込んだ。
徐に写真を取り出す。
「何ですか?」
「隠したんだよ。当時、みんなで集合写真撮ってさ」
まだあった。
当時、悪戯目的でこの写真の裏に自分達の集合写真を入れたのだ。
俺達が撮ったんだ。と永遠に知らしめたかった。
写真には幼い自分が写っている。
「これが俺」
「確かに、そうですね」
本当に卒業生だったんだ。と完全に納得してくれた様子。
「この頃の俺は若かったなー」
「貴方今幾つですか?」
「24」
「まだ全然じゃないですか」
懐かしい面子を暫く眺めていると、横から覗き込んでいた彼女は俺が額から出した写真をじっと見詰めていた。
自分の写真をそんな真剣に見詰めていると思うと、恥ずかしくなって来た。
「正直さ、今もそれの何処が良いのか分からないんだよ」
「え?! でも、今でも賞を取る程の腕前なのでしょう?!」
「賞ってもアマチュアだけどな。
今はさ、ある程度の知識なら独学で覚えたけど当時は本当に適当。インスピレーションってか、行き当たりバッタリ」
「そうだったんですか……」
原寸より引き伸ばされた写真。
朝礼の時、みんなの前で表彰された時の優越感と喜び。
高校の時の一番の思い出かもしれない。
「実はですね、前に一回、道具を仕舞いにここの準備室に入った事があるんです。
その時にこの写真がたまたま目に入って、ずっと気になっていたんです」
「へー、そうなんだ」
「誰が撮ったんだろうって。今は写真部活動停止していますから、もうこの学校に居ないんだろうなと思ってましたし」
「確かに俺の時も殆ど身内、クラスで仲良いもん同士だったからな」
「好きなんです」
「ふーん………。
―――好き?!!」
「惚れてたんです、この写真に。この写真、きっと屋上から撮ったのでしょう?」
確かに、当時カメラを首から提げ、みんなで屋上に上がった。
放課後な時間帯故、当然屋上からは夕焼けが見えた。
赤い空の上には夜が迫り、藍色と朱色が混ざり合っていて。
その瞬間を捉えた写真だった。
「今は鍵が掛けられて立ち入り禁止なんです。だから、半分憧れかもしれませんね」
顔が熱くなる。
目の前で俺の写真が良いとか、そう言われると酷く照れた。
褒めると言うより、好きだとか、惚れただとか。まるで恋の告白の様ではないか。
そう言っている時の彼女の表情が堪らなかった。
一生懸命で。
植物園で会った時はあんな目で俺を見てた癖に。
キラキラした瞳があまりにも綺麗で。
また写真を撮りたくて腕が疼く。
心躍った。
俺の作品を此処が良いとか、悪いとか言わずに、純粋に「惚れた」の一言。
周りの大人からそんな一言、貰った事無かった。
「来いよ」
「はい?」
「実はな、俺の時も屋上、立ち入り禁止だったんだ」
「え?! そうだったんですか?!」
「教えてやるよ、鍵の開け方」
「な、何言って…!」
「鍵変わってなかったらの話だけど」
時間帯的にはまだまだ明るいが、青空もまた絶景だろう。
3階のもっと上まで一気に駆け上がった。
屋上の一歩手前、立ち入り禁止と書かれた看板が提げられたドアノブに手を掛けた。
「ヘアピンかなんか持ってる?」
「あ、あります!」
「ありがと。
こんな玩具みたいな鍵、簡単だっつーの………、ほら、開いた」
鍵はやはり変わっていなかった。
嗅ぎ付かれて鍵を強化されたら困るから、律儀に帰る時は掛け直していたのが幸いした。
「手慣れていますね……」
「おう、常習犯だったからな」
彼女はポカンとしていた。
まあ、この進学校でこんな馬鹿な真似する奴は今も昔もそういないのだろう。
珍しそうに俺を見ていた。
「先生にチクらないでな?」
久し振りに開けると少し扉が重かった。
ぎぎっと軋む音が大きくなった気がする。
扉から一気に風が流れ込み、長めの前髪が舞う。
目に入り痛い。
「凄いです!」
髪型が崩れる事などお構いなく、後ろにいた彼女は俺より先に屋上へ出た。
突風でバレるかも知れない。
急いで扉を閉めた。
「絶景絶景」
フェンスギリギリにいる彼女の隣に立った。
「凄いですね、街が一望出来ます!」
「まあ、マンションには劣るけど、一応3階建てだからな、此処の高校」
強風なのにスカートを押さえ様ともしない。
ギリ見えないからいいけどさ。
キラキラした瞳は年相応。
子供だった。
「笑うと可愛いなー」
「何か言いました?」
「んや」
この風景も懐かしい。
先生にあの写真の撮影場所が此処だとばれなくて良かった。
ひょっとして分かってて見逃してくれたのかな?
「ロックオンさん」
考えていると、振り向いた彼女がいつの間にか風景から俺を見ていた。
「さんはいらないよ……ってか、それペンネーム……」
「ではロックオン、此処から撮ったのですか?」
「まあ、だいたい此処等辺に立ったかな?」
へー、とその場所に立って再び風景を見る。
子供らしい行動を見てると飽きない。
当時みたいにフェンスに背を預け、空を仰いだ。そのままズルズル地面に座る。
「なあ、お前何であそこに寝ていたんだ?」
「あそこ?」
「植物園。寝てただろ?」
「ああ……、僕、水やるの好きなんです」
「へぇ」
校長が良く水を撒く姿を授業中見た事がある。
「特に係りと言う訳ではないのですが……、そう言う事をやるのが好きなので、たまにやらせて頂いてるんです」
「で、その内寝ちゃったと」
「わ、笑っても構いません。気持ち良かったんですよ。土曜日とか、全然人来ないじゃないですか、あそこ」
「じゃあ良く寝てるの?」
「……」
口を尖らせた表情が本当に可愛らしかった。
「やー、本当にびっくりしたからなー。あそこでサボる奴はいたけど、お前さんみたいな優等生っぽい子が寝てるもんだから」
まあ、サボってたメンバーに俺は入っていた訳だが。
しかし、思い返すと一見不釣り合いに見える優等生の居眠りだが、固定概念を取っ払えば実にナチュラル。
森で眠る美少女。いや妖精か?
思い出すとまた顔が熱くなった。
ずっと写真を撮っていたかった。
人を撮るのはあまりやらない方。
正直苦手で滅多に撮らないのだが、彼女を前にすると自然と指が動いた。
自分でも不思議だった。
まるでこれは。
「ふふっ、あははっ!」
急に笑い出すものだから俺は驚いた。
さっきまであんなにもムスッとした表情をしていたのに。
「な、何笑ってんだよ?」
「悪い事したの、初めてです」
「は?」
「いつも兄さんや姉さんの目があるから。こんな悪い事出来ないんです」
悪い事。
確かに立ち入り禁止区域に入るのは悪い事だ。
でも、これは悪い事言うより悪戯に近い気がする。
「お兄さんとお姉さんがいるのか?」
「ええ。僕が末っ子です」
「てか、お前女なのに僕って言うんだな」
「それもよく叱られます。女らしくしなさいって。
でも無理な話なんですよ! 姉さんより兄さんの方が多いのですから、必然的にそうなりますよ!」
プンプン怒りながら俺の横に座る。
思ったより、感情豊かで良く喋る子だ。
典型的なクラス委員長タイプだと思っていたのだが。
「お前さん、案外お喋りさんだな?」
「えっ…?」
指摘すると、相手の方が大きいリアクションを取る。
「ぼ、僕、どうして見ず知らずの貴方に……」
口を押さえた。
「ん?」
「貴方がお喋りなんですよ。貴方に釣られて僕も話してしまう」
膝を抱えて顔を隠す。
「えー? そうか? お前からも結構話し掛けてんぞ?」
「そ、そんな筈ないっ! 絶対貴方がっ…!」
顔を真っ赤にして話す。
実は恥ずかしがり屋なのか? なんて思った。
「貴方が……綺麗だとか、可愛いとか、煽てるから……」
か細い声が届いた。ほぼ独り言。
聞こえた時点で独り言ではなくなるが。
「え? お前さん、何かのモデルとかしてないの?」
「なっ、僕がですか?! お世辞も大概に…!」
「いや! お世辞とか全然……、ってか、お前モデルとかじゃないの?!」
てっきりそんな事をしてるのかと考えていた。
「もぅ……、そうやって、僕をまた……」
俯くが、耳までは隠せない。赤い耳が見えた。
(うわー、可愛いの)
今時こんな純粋な女子高生もいたもんか。
「悪い、気分悪くしたなら謝るよ」
「いいです、別に」
「……」
「……」
暫く無言が続いた。
「っくしゅ」
沈黙を割いたのは彼女のくしゃみだった。
「流石に夕方になって来たな。5時か、確かにそうか」
2時に学校に来てもう3時間経った。
あっと言う間だ。
風も冷たくなって来た。
そろそろ戻らなくては。
「夕方……」
勢い良く立ち上がり、何かを探す様に辺りを見渡した。
「見て下さい! ロックオン! あの時と同じではないですか?!」
指を刺す方向には赤い太陽。迫る夜。
「おー、本当だ。相も変わらず綺麗なもんだぜ」
「写真で見て以来、ずっと生で見たかったんだ」
紫色の髪が夕日で変色していた。
昼間とは違う輝きを放つ。
「この風景を生で見て、そして撮影した貴方がずっと羨ましかった」
「良かったな、見れて」
「はいっ!」
振り向き様の笑顔と来たら。
髪も去る事ながら、赤い目も夕日に良く映えた。
綺麗な金色色に見える。
「あ、また写真撮ろうかな?」
「良いですね、きっと夕焼けは毎日微妙に違う物でしょうから」
横に一歩ずれた。
「動くな」
ピタリと固まった。
「お前と一緒に撮りたいな、夕日」
「はっ…?! 何言ってるんですか?!!」
夕日の助けもあって、顔は通常の倍赤くなる。
「俺、お前が好きなんだよ」
「はぁあああ?!」
あのドキドキのお返しとばかしに彼女を攻めた。
「本当に写真映え半端無い。どんな綺麗な花もお前と一緒に写すとな、引き立て役にしかならないんだよ。
さっき写してる時に思ったんだけどさ」
「あっ、あの時…!」
初対面の時の事を思い出したのか、焦りを見せる。
寝顔を撮られたのだったと。
「頼むよ! 俺人撮りたいなんて久し振りでさ、俺の趣味に付き合ってくれ!
屋上まで連れて来たお礼だと思ってさ!」
必死過ぎる自分に笑えた。
無性に撮りたい。
こんなチャンス二度とない。
このロケーションと彼女、これから一生ない気がした。
「お…、思い出の一枚、と言う事で……」
「おっ! ありがとさん!」
【何でこんなに喜んでいるんだ、僕は】
彼女の心の声など聞こえる筈もなく。
(やばいな。これは良いモデルだからこんなに嬉しんだか、この子がこんなにも可愛らしいからドキドキしてるのか)
そこでふと思う。
「あれ? 名前まだ聞いてなかったよな?」
「あ…、そ…でしたね……」
「名前は?」
「………ティエリア」
「へー、顔と良く合った綺麗な名前だな!」
「っ! ……そんなに煽てても、何も出ませんからね?」
言葉とは反対に、ティエリアは緩やかに笑った。
最高の一枚、頂きました。
もう少し学校に残ると言うティエリアは校門の前まで俺を見送りに来てくれた。
「今日は楽しかった、ありがとうティエリア」
「いいえ、僕こそ。僕のわがままで屋上の鍵を開けさせてしまって」
「いや、あれは俺が勝手にやった事だし」
「寝顔、撮った事チャラにして上げます。人を撮る練習代、チャラです」
あー…、そう言えば言い訳でそんな事を言った気もする。
「僕、こんなに人と話したの初めてです。きっと貴方が……」
「ん?」
「兎に角、初めて非行に走って、楽しかったです」
あれで、非行ね……。
「コンテスト、入賞する事を願っています、ロックオン」
あ、そうだ。
俺コンテスト目的だったっけ?
忘れた自分、何と馬鹿だ。
「本名はニール・ディランディって言うんだ」
「ニール……、分かりましたロックオン!」
「いや、だからニールだって」
「覚えましたよロックオン」
「……もうロックオンで良いよ」
こいつ、若干天然入ってんな。
「現像したら比較してみたいな」
「ああ、昔の奴とですか?」
「そ。どれ位変わったか……」
きっと、これの方が数段良いだろうけど。
「なあ、お前の電話番号、聞いてい?
一緒に見ようぜ?」
全てはある日の夕方から始まった。
「とはい言いつつも、寝顔の盗撮、罪悪感ありまくりだなー……」
パソコンで今日撮った写真を見ていた。
夢中だったとは言え、この枚数。
相手が天然ちゃんで助かった。
「一応、隠しフォルダに………うぉ?!!」
一枚、明らかに構図が可笑しい一枚があって。
それを拡大すると白と肌色の写真。
「あ……あんの気のか……」
転びかけて手を突いたあの時の一枚。
どうしようかと考えた挙句、隠しフォルダの中に、更に隠しフォルダを作る事でセキュリティを強化する事に至った。
-------------------------
≪考えてる私は楽しかったですー≫
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映画終わってもまだまだ熱いもん!
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何を覚えるのやら。
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