こちら「ガンダム00」に心奪われたブログです!
見にくいですが勘弁!愛は本物です。基本、自己満足なんで期待は禁物!
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
さっきの続き。
これ、やっと完成した。
正直しんどいわ。ライルの扱いってデリケートゾーンだと思います。
「僕は泳げるが潜れないんだ。この5年間の内にマスターしておけば良かった。
……君は潜れるか?」
「えっと…まあ、一応」
「それは良かった」
にっこり、ティエリアが笑った。
(…うお、これは映える)
キラキラ、太陽の光に反射する海。
その海は彼女のふともも付近までの水位。彼女は一度振り返った。
柄もなく、リボンなんかもなく、本当にまっさらな水着だった。
それが似合うって言う辺り、着てる本人のレベルの高さって奴か。
今日何度目か分らない。
細いなー、白いなー。って思ってしまう。
それはただ細いのではなく、無駄な肉がないんだ。
マイスターさんは要は軍人だ。当然なのだろうか。
振り向いて見えた白髪の彼女も確か軍人だ。
でも、結構良い体。
「…純粋にひんにゅっ……」
「……あっちで一緒に泳いで来たいのか?」
さっきと打って変わって、弱々しい声に驚いて振り返ると何とも悲しそうな顔のティエリア。
口を尖らせて、拗ね顔。
初めてだ、こんな表情俺に見せるのは。
成程、マリーの方を見てたからか。
それは体格を見比べる為で。
「いや、アンタ、白似合うなってさ」
「はい?」
「まるで人魚姫だ。
ほら、潜るんだろ?」
まだ16、7だろうに。変な気使って。
嬉しかった、一緒に潜ろうと誘ってくれて。
手首を掴み、グイっと引っ張ると彼女はいとも簡単によろけた。
「行くぞ、息吸え」
ゴーグルを付けてやると一気に潜る。
海は久し振りだ。
そもそも、アイルランド出身の俺は夏が嫌いなんだ、本当は。
だからいつもの倍、憂鬱だったんだ。
でも、彼女は俺の心境を無視しているのか、気付かないのか。
強引でいてくれて有り難い。
足も付かない深い海に導くと彼女はくるり、仰向けになった。
(ティエリア?)
本当に人魚だった。
血液が逆襲した。
熱い、海の中は冷たい筈なのに。
まずい、バレるかな?
急激に上がっている体温に。
手を放そうにも、ティエリアは強く握っていて。
(変わってない、変わっていません……ロックオン)
ティエリアが握ってない方の手を上にあげた。何かを掴むように。
何かと思い、ライルも上を見上げるとそこにはゆらゆら揺れる海越しの空。
満天の星空とはまた違う美しさ。
暗闇の中で強く光るのではなく、光の中で更に強く光る海面は酷く綺麗だった。
綺麗なんて言葉じゃ、申し訳ない気がする位。
だからティエリアは誰かに頼んでまで見たかったんだ。
この光を。
これを一人で体感するのは勿体ない。
離しかかっていたティエリアの手を握り返した。
(変わってない、変わってない、何も変わってない)
貴方がいなくなった癖に、少しは悲しそうな色になればいいのに。
どうしてあの時と変わらず、そんなに綺麗に輝くんだ。
(ティエリア?)
ティエリアのゴーグルに水が溜まっている。
漏れたのだろうか?
いや、違う。
これは彼女の涙だ。
美しすぎて泣いたのか?
いや、違う。ならもっと嬉しそうに泣く筈だ。
焦らない俺は薄情者だ。
泣くティエリアの顔は、やっぱり人魚姫だもの。
王子と恋叶わず、泣く人魚姫に見えたんだ。
その瞬間だ、
ティエリアが言葉を紡ごうとして、口が動いた。
ああ、その悲しそうな口から、何を言うのだろう。
「ゴポゴポッ!!?」
「!!!」
彼女は人魚じゃない、人間だった。
「ゲホッ! ゲホッ!!」
「馬鹿! 何してんだよ?!」
背中を摩るも噎せるばかり。
塩水は辛いだろうに。
「丘に戻るか?」
しかし、噎せながら首を横に振った。
「も……いっかい……ゲホっ!」
慌てた俺は彼女を抱き抱え、背中を摩っていた。
そんな事にドキドキしている暇なんてなかったから出来た事だが。
「無理すんなって……」
ゴーグルを外してやると、やはり彼女の瞳は潤んでいた。
「どうしたんだ? やな事でも思い出した?」
久し振りに兄貴気分。
泣いていた妹に問いかけるように聞いていた。
「変わってなかった……」
前も潜ったんだろう。周りの話を聞くとそうだ。
「変えた筈なのに、微塵も……。
失った筈なのに、太陽は薄情だ……、ちっとも悲しまない」
変わらず綺麗である事は良い事ではないか?
彼女の感覚がよく分からない。
「やはり海は嫌いだ……、あの人の名前を呼ぶ事も許さない……」
あの人?
(あ、そうか)
あの人が誰だか、不思議と直ぐに分った。
結局それだ。
結局兄さんだ。
俺も結局、彼女に利用されたんだ。
代わりなんだ。代わりにしかなれない。
「……やはり止めておくか…、少し海水を飲みすぎた……気持ち悪い…」
大丈夫か? なんて話しかけれなかった。
気分はどん底。
このまま彼女を置いて帰りたい。
「泳げるか? そうか、泳げるんだよな、潜れないだけで」
支えていた体から離れる。
溺れた彼女をに背を向けて浜辺へ向かう。男としては最悪な行為だな。
「ありがとう」
後ろから声がした。
止めてくれ。
今の俺には痛い言葉でしかない。
「実はな、この時に僕は彼と結ばれたんだ」
………はい?
これは振り返らずを得ないぞ?
「5年前の今日みたいな日に、彼に無理矢理海に潜らされてな。
前々からそうだとは思っていたんだが、イマイチ自信がなくて、カマを駆けたら当たった」
嬉しそうに、でも寂しそうにティエリアは俺の事を見ていた。
「何で…、俺にそれを……?」
俺だからか、俺が弟だから?
「まだ君には話してなかったから。スメラギは知っているだろうし、アレルヤやラッセに刹那辺りも…? かな?」
「それだけ?」
「まあ、確かに得もなく損もない話だが……」
それって、
「俺に何を求めてるんだ?」
俺にどうなって欲しいんだ?
どんな関係を求めてるんだ?
「求める?」
首を傾げるティエリア。俺の頭は停止した。
予想を反したから。
「潜りに誘ったり……」
そんな、兄さんとの関係なんて。
「別に、潜れれば誰でも良かった。
丁度君が暇そうだったら頼んだだけで」
本当にそうなのか?
たまたま俺なのか?
本当に何も思わず俺だったなら、彼女は酷いな。
「すなまい……誰でも良いと言うのは、その……言い方が上手く言えなくて……。
よくスメラギに叱られるんだ、棘があるって。言い回しが悪いな……」
顔に出ていたようだ。
ティエリアは今の「誰でもよかった」と言う部分に怒っていると思ったんだろう。
目を伏せて、ティエリアはゆらり、少し海の潮に流された。
そんな表情を見たら、さっきまでの自分の態度が急に恥ずかしくなってきた。
これから生死をさ迷う仲間に、自分の過去を話したに過ぎないんだろう、彼女からしてみれば。
直ぐに人を疑う。
悪い癖だ。
こんな子供を疑うなんて。
だいぶ自分は性格が歪んで育ったようだ。
ま、あんな境遇だったんだ。大目に見てくれ。
「だ…大丈夫か? 浅瀬まで送るよ」
どうしようかと考えた時、このまま手を引くと、海の水を被ってしまいそうで。
ティエリアをおんぶする事にした。
海の浮力だろうか? ティエリアの体重だろうか、軽かった。
それにしても当たる物がない。
勿論背中に。
当たるのは彼女のあばら骨の感触と水着の布が擦れる感触。
残念ながら『柔らかい物が当たってる』なんて感想はお世辞にも言えない。
(体格は人それぞれ……、うん)
16、7位でその体格じゃ将来は望めないか。
俺ならご免だ。
もうちょっとグラマーじゃないと。
これでよく兄さんは……。
(あれ?!! 兄さんが?!! ティエリアと?!!)
「……どうした? ロックオン?」
(むす…ばれた? え? イチャコラ? ラブラブ? チュウ?)
「ロックオン、暑いのか? 耳が赤いぞ?」
(結ばれたって、告白したって事か? それとも……)
「おい、ロックオン…?」
「う!」
ティエリアの手が俺の頬に触れた。
ティエリアの呼吸する度に動く腹を、何も隔てる物無く感じて。
急に意識し出した俺は何なんだ。
「大丈夫か? お前も気分が悪いのか?」
声を発する度に、喉の振動が俺の体に伝わる。
兄さんもティエリアに触れたのか?
俺、今ティエリアの太ももを掴んでる。
おんぶの為、必然的だが。
柔らかい。
幾ら女性的な体付きをしていないと言ったって、男の体付きと言う訳じゃない。
柔らかいのは確かなんだ。幾らないと言っても、彼女の胸部が……。
「降りた方が良いか…?」
耳のすぐ後ろで声が。
近い、近いよ。
近いというか、ゼロ距離じゃん。
ブルリ、体が震えた。
兄さんが好きなのに、他の男とこうしているのはいけないのではないか?
そう言いたい。
でも、他の男と言っても瓜二つの俺。
でも、ティエリアは俺を全く意識してないし。
今まで散々嫌になってきた筈なのに、これだけは何故か悲しい気分になった。
「気のせい、大丈夫だ」
再び歩き始めた。
この状態で岸に着いた時、周りはどんな目で見るだろうか?
俺は人の恋人奪うような事はしないし、ましてやこの子幾つだ? 俺はロリータコンプレックスじゃない。
(え…? 待てよ、今この容姿で、5年前とかティエリア何歳…?)
12…位?
「犯罪!!?」
「何がです?」
兄さん! もう一ついけない罪を犯していたんだな!!
幾ら武力介入していた身とは言え、それは人として落ちている。
「ティエ…! おま、兄さんと、どこまで…っ?!」
首だけ振り返るとキョトン顔のティエリア。
まさかまさか。
だって、子供は早寝しなきゃ。兄さん、頼む、違うよな。
「言っておくが、」
何ですか?!
「僕は、違うからな……」
声のトーンがさっきと似ていた。
海から上がった時の、くぐもった声。
「貴方は同じ顔なだけで、違う人生、違う生き方をして来たんだ。
一目見た時から、僕は刹那が連れてきた新しいメンバーだと思っていたさ」
あ、そうか。
今、兄さんがどうのこうの言ったからか。
子供にまた気を遣わせてしまったか。
そんなの彼女の態度からヒシヒシ伝わっているさ。
こんなにも無視されると逆に気持ち悪くて。
「それに、君にニールの陰など、僕は求めてはいない。
そこまで僕は君を意識していない。
だって、見れば見る程、君はニールと似ていないんだ」
意識してないって、それはショックだ。
これも彼女の言う言葉の棘? 上手く言えないから?
そして俺は似てないは禁句だ。
能力が似てないとか、もう嫌になるんだ。
「声も似てるようで、微妙に違うし。笑った顔とか、全然似てない!」
え? そっち?
と言いたかった。
そりゃ双子だって、他人は他人だ。生まれた時は同じでも何十年も経てば違うさ。
更に俺達、何年会ってないと思う?
「君と彼を重ねるなんて、反吐が出る。
彼はもっとカッコいい」
「それ、傷つくなー」
兄さん絡みでこんな傷つけ方をされるなんて、初めて。
これは完全に俺を傷つけにかかってる。
容姿とか比べられるなんて。
いつも中身ばっかりだったから。
「おっかしいなー、俺達、親でも間違える位ソックリちゃんだったのに」
「髪型を揃えるからだ。 表情も違うし、仕草も違うし、笑い方も、ご飯の食べ方も、ハロの扱い方だって、似てない」
「そんなに違うか? なら、少しは兄さんに似せた方が良いかな…?」
双子って、必然的に性格が間逆に育つもんなんだ。
「とんでもない! 止めてくれ!」
「うわ! 暴れるな!」
全力で俺を否定した。
俺を止めるようにギュっと首に手を回す。
「てか、初めてだよ」
兄さんに追いつかなくて良いとか。
「冗談。ってか無理」
兄さんと何年会ってないと思う? 二度と会えないし。
「僕の中のニール像は固まっているんだ。下手に君に壊されては困る」
身内の恋バナとか、正直どんな表情をすればいいのか分らない。
ましてや、彼女はそれを失っているんだ。
「それに……、これ以上似たら、ニールに申し訳ない事をしてしまう……」
「へ?」
それって、どう言う意味?
「ロックオーン! ティエリアー! どうしたのー?」
遠くからアレルヤの声が聞こえた。
ぐったりしたティエリアに気付いたんだろう。
「海水飲んだ……おえ」
「早くパラソルの陰に置いてあげなよ」
また戻ってきた。
この場所へ。
シートの上に寝かせると彼女は顔が青い。
「はい、水飲ませてあげて」
水を手渡したスメラギは特に心配する素振りを見せない。
お、ティエリアから奪ったパーカーを着たまま。
狭くてチャックは閉められないよう。
「ティエリアったら、二人で海に潜りに行ってたなんて。抜け目ないわね~?」
この状況を楽しんでます、この人。
ティエリアもグッタリで言い返せない。
「ほら、ティエリア、水だ」
「ん……、ありがとう……」
「あら?」
スメラギは俺の顔を急に覗き込んだ。
「な…何か?」
「ティエリア、可愛いでしょ?」
「はいい?!」
「スメラギ!!」
ティエリアが怒って、額に当てていたタオルを投げつける。
「からかわないで下さい!!」
「本気よー、いいわねー、若いって」
ティエリアに言った筈なのに、ちらり、俺の方を見る。
いや、俺は貴方と年は大して変わらないんですけど。
やっぱり俺に言ったんだ。
俺に詰め寄り、ティエリアに聞こえない大きさで言う、
「どうせ、水着姿見てティエリアが女の子だって知ったんでしょ?」
顔が熱くなった。
彼女には悪いが、全くその通り。だってさ、一人称『僕』だもん。
身長だって高いし、何より体系が……。
ノーマルスーツだって、男の俺達と同じ作りだし。
「そっくりね~、流石双子」
双子という単語にドキリした。
心臓に悪い。
「って、え?! 兄さんも?!」
そうか、兄さんも勘違いしたか。
そりゃそうだよ。これは双子関係なく、誰でも男と思うだろう。
「えぇ?!」
待って、兄さんはこの日にティエリアと結ばれて、この日に男じゃないと知ったのか?
「ホモかよ!!」
「はあ?」
「ほ…何ですか、ソレ?」
俺の中の兄像が崩れてる。
いや全壊だ。
俺が思ってるより、ダメな大人なのか?
幼いティエリアに手を出して、男同士だと知った上で好意を抱いていた?
「ロックオン…?」
「あ、こっちの話です…」
会わない内に…随分と……。
ティエリアが女でよかった……。
「あ、そう言えば、どうだった? ティエリア。海の中は?」
ピクリ、反応した。
横になっていたティエリアは上半身を起こす。
また緩く笑った。
「最高です。……少し、悲しくなる位……」
どうしてだ。
女だと知って、兄さんとの関係を知って、それから彼女が笑う度にキュンと来るのは。
キュンと来てる辺り、双子だな。好みが同じなのかな?
いや、俺は断じてホモではないが。
認めるよ、俺、ティエリアに落ちかかってる。
でも、落ちる事はないよ。
今でも思ってて、泣く程好きだったのに奪う事は出来ない。
戦いの最中に芽生えた恋。うん、美しい。多分物凄く堅いと思う。
奪うなんて、そんな人でなしな事出来るか。
「あのっ…!」
スメラギに言ったと思ったら俺だ。
ティエリアが、俺を見上げてた。
「明日も潜りたいと言ったら、また引っ張ってくれるか…?」
少し恥ずかしげに、ちょっと頬を染めて。
「え…?」
「……」
そんな目で見上げたら。
「あ…ああ!」
「ありがとう」
ごめんなさい兄さん。
俺、人でなしかもしれない。
------------------------------------
≪ティエは本編で予想以上にライルを意識してなかったと思います≫
≪まあ、私、ちゃんと公式小説読んでないんでどうか…;≫
≪ファーストは泣きながらスラスラ読んだのにな≫
≪ティエの容姿は変わらないとライルさんは知らないので≫
≪それでも犯罪級だよ、見た目16の子にとか≫
≪では今日から拍手文を本格的に……≫
これ、やっと完成した。
正直しんどいわ。ライルの扱いってデリケートゾーンだと思います。
「僕は泳げるが潜れないんだ。この5年間の内にマスターしておけば良かった。
……君は潜れるか?」
「えっと…まあ、一応」
「それは良かった」
にっこり、ティエリアが笑った。
(…うお、これは映える)
キラキラ、太陽の光に反射する海。
その海は彼女のふともも付近までの水位。彼女は一度振り返った。
柄もなく、リボンなんかもなく、本当にまっさらな水着だった。
それが似合うって言う辺り、着てる本人のレベルの高さって奴か。
今日何度目か分らない。
細いなー、白いなー。って思ってしまう。
それはただ細いのではなく、無駄な肉がないんだ。
マイスターさんは要は軍人だ。当然なのだろうか。
振り向いて見えた白髪の彼女も確か軍人だ。
でも、結構良い体。
「…純粋にひんにゅっ……」
「……あっちで一緒に泳いで来たいのか?」
さっきと打って変わって、弱々しい声に驚いて振り返ると何とも悲しそうな顔のティエリア。
口を尖らせて、拗ね顔。
初めてだ、こんな表情俺に見せるのは。
成程、マリーの方を見てたからか。
それは体格を見比べる為で。
「いや、アンタ、白似合うなってさ」
「はい?」
「まるで人魚姫だ。
ほら、潜るんだろ?」
まだ16、7だろうに。変な気使って。
嬉しかった、一緒に潜ろうと誘ってくれて。
手首を掴み、グイっと引っ張ると彼女はいとも簡単によろけた。
「行くぞ、息吸え」
ゴーグルを付けてやると一気に潜る。
海は久し振りだ。
そもそも、アイルランド出身の俺は夏が嫌いなんだ、本当は。
だからいつもの倍、憂鬱だったんだ。
でも、彼女は俺の心境を無視しているのか、気付かないのか。
強引でいてくれて有り難い。
足も付かない深い海に導くと彼女はくるり、仰向けになった。
(ティエリア?)
本当に人魚だった。
血液が逆襲した。
熱い、海の中は冷たい筈なのに。
まずい、バレるかな?
急激に上がっている体温に。
手を放そうにも、ティエリアは強く握っていて。
(変わってない、変わっていません……ロックオン)
ティエリアが握ってない方の手を上にあげた。何かを掴むように。
何かと思い、ライルも上を見上げるとそこにはゆらゆら揺れる海越しの空。
満天の星空とはまた違う美しさ。
暗闇の中で強く光るのではなく、光の中で更に強く光る海面は酷く綺麗だった。
綺麗なんて言葉じゃ、申し訳ない気がする位。
だからティエリアは誰かに頼んでまで見たかったんだ。
この光を。
これを一人で体感するのは勿体ない。
離しかかっていたティエリアの手を握り返した。
(変わってない、変わってない、何も変わってない)
貴方がいなくなった癖に、少しは悲しそうな色になればいいのに。
どうしてあの時と変わらず、そんなに綺麗に輝くんだ。
(ティエリア?)
ティエリアのゴーグルに水が溜まっている。
漏れたのだろうか?
いや、違う。
これは彼女の涙だ。
美しすぎて泣いたのか?
いや、違う。ならもっと嬉しそうに泣く筈だ。
焦らない俺は薄情者だ。
泣くティエリアの顔は、やっぱり人魚姫だもの。
王子と恋叶わず、泣く人魚姫に見えたんだ。
その瞬間だ、
ティエリアが言葉を紡ごうとして、口が動いた。
ああ、その悲しそうな口から、何を言うのだろう。
「ゴポゴポッ!!?」
「!!!」
彼女は人魚じゃない、人間だった。
「ゲホッ! ゲホッ!!」
「馬鹿! 何してんだよ?!」
背中を摩るも噎せるばかり。
塩水は辛いだろうに。
「丘に戻るか?」
しかし、噎せながら首を横に振った。
「も……いっかい……ゲホっ!」
慌てた俺は彼女を抱き抱え、背中を摩っていた。
そんな事にドキドキしている暇なんてなかったから出来た事だが。
「無理すんなって……」
ゴーグルを外してやると、やはり彼女の瞳は潤んでいた。
「どうしたんだ? やな事でも思い出した?」
久し振りに兄貴気分。
泣いていた妹に問いかけるように聞いていた。
「変わってなかった……」
前も潜ったんだろう。周りの話を聞くとそうだ。
「変えた筈なのに、微塵も……。
失った筈なのに、太陽は薄情だ……、ちっとも悲しまない」
変わらず綺麗である事は良い事ではないか?
彼女の感覚がよく分からない。
「やはり海は嫌いだ……、あの人の名前を呼ぶ事も許さない……」
あの人?
(あ、そうか)
あの人が誰だか、不思議と直ぐに分った。
結局それだ。
結局兄さんだ。
俺も結局、彼女に利用されたんだ。
代わりなんだ。代わりにしかなれない。
「……やはり止めておくか…、少し海水を飲みすぎた……気持ち悪い…」
大丈夫か? なんて話しかけれなかった。
気分はどん底。
このまま彼女を置いて帰りたい。
「泳げるか? そうか、泳げるんだよな、潜れないだけで」
支えていた体から離れる。
溺れた彼女をに背を向けて浜辺へ向かう。男としては最悪な行為だな。
「ありがとう」
後ろから声がした。
止めてくれ。
今の俺には痛い言葉でしかない。
「実はな、この時に僕は彼と結ばれたんだ」
………はい?
これは振り返らずを得ないぞ?
「5年前の今日みたいな日に、彼に無理矢理海に潜らされてな。
前々からそうだとは思っていたんだが、イマイチ自信がなくて、カマを駆けたら当たった」
嬉しそうに、でも寂しそうにティエリアは俺の事を見ていた。
「何で…、俺にそれを……?」
俺だからか、俺が弟だから?
「まだ君には話してなかったから。スメラギは知っているだろうし、アレルヤやラッセに刹那辺りも…? かな?」
「それだけ?」
「まあ、確かに得もなく損もない話だが……」
それって、
「俺に何を求めてるんだ?」
俺にどうなって欲しいんだ?
どんな関係を求めてるんだ?
「求める?」
首を傾げるティエリア。俺の頭は停止した。
予想を反したから。
「潜りに誘ったり……」
そんな、兄さんとの関係なんて。
「別に、潜れれば誰でも良かった。
丁度君が暇そうだったら頼んだだけで」
本当にそうなのか?
たまたま俺なのか?
本当に何も思わず俺だったなら、彼女は酷いな。
「すなまい……誰でも良いと言うのは、その……言い方が上手く言えなくて……。
よくスメラギに叱られるんだ、棘があるって。言い回しが悪いな……」
顔に出ていたようだ。
ティエリアは今の「誰でもよかった」と言う部分に怒っていると思ったんだろう。
目を伏せて、ティエリアはゆらり、少し海の潮に流された。
そんな表情を見たら、さっきまでの自分の態度が急に恥ずかしくなってきた。
これから生死をさ迷う仲間に、自分の過去を話したに過ぎないんだろう、彼女からしてみれば。
直ぐに人を疑う。
悪い癖だ。
こんな子供を疑うなんて。
だいぶ自分は性格が歪んで育ったようだ。
ま、あんな境遇だったんだ。大目に見てくれ。
「だ…大丈夫か? 浅瀬まで送るよ」
どうしようかと考えた時、このまま手を引くと、海の水を被ってしまいそうで。
ティエリアをおんぶする事にした。
海の浮力だろうか? ティエリアの体重だろうか、軽かった。
それにしても当たる物がない。
勿論背中に。
当たるのは彼女のあばら骨の感触と水着の布が擦れる感触。
残念ながら『柔らかい物が当たってる』なんて感想はお世辞にも言えない。
(体格は人それぞれ……、うん)
16、7位でその体格じゃ将来は望めないか。
俺ならご免だ。
もうちょっとグラマーじゃないと。
これでよく兄さんは……。
(あれ?!! 兄さんが?!! ティエリアと?!!)
「……どうした? ロックオン?」
(むす…ばれた? え? イチャコラ? ラブラブ? チュウ?)
「ロックオン、暑いのか? 耳が赤いぞ?」
(結ばれたって、告白したって事か? それとも……)
「おい、ロックオン…?」
「う!」
ティエリアの手が俺の頬に触れた。
ティエリアの呼吸する度に動く腹を、何も隔てる物無く感じて。
急に意識し出した俺は何なんだ。
「大丈夫か? お前も気分が悪いのか?」
声を発する度に、喉の振動が俺の体に伝わる。
兄さんもティエリアに触れたのか?
俺、今ティエリアの太ももを掴んでる。
おんぶの為、必然的だが。
柔らかい。
幾ら女性的な体付きをしていないと言ったって、男の体付きと言う訳じゃない。
柔らかいのは確かなんだ。幾らないと言っても、彼女の胸部が……。
「降りた方が良いか…?」
耳のすぐ後ろで声が。
近い、近いよ。
近いというか、ゼロ距離じゃん。
ブルリ、体が震えた。
兄さんが好きなのに、他の男とこうしているのはいけないのではないか?
そう言いたい。
でも、他の男と言っても瓜二つの俺。
でも、ティエリアは俺を全く意識してないし。
今まで散々嫌になってきた筈なのに、これだけは何故か悲しい気分になった。
「気のせい、大丈夫だ」
再び歩き始めた。
この状態で岸に着いた時、周りはどんな目で見るだろうか?
俺は人の恋人奪うような事はしないし、ましてやこの子幾つだ? 俺はロリータコンプレックスじゃない。
(え…? 待てよ、今この容姿で、5年前とかティエリア何歳…?)
12…位?
「犯罪!!?」
「何がです?」
兄さん! もう一ついけない罪を犯していたんだな!!
幾ら武力介入していた身とは言え、それは人として落ちている。
「ティエ…! おま、兄さんと、どこまで…っ?!」
首だけ振り返るとキョトン顔のティエリア。
まさかまさか。
だって、子供は早寝しなきゃ。兄さん、頼む、違うよな。
「言っておくが、」
何ですか?!
「僕は、違うからな……」
声のトーンがさっきと似ていた。
海から上がった時の、くぐもった声。
「貴方は同じ顔なだけで、違う人生、違う生き方をして来たんだ。
一目見た時から、僕は刹那が連れてきた新しいメンバーだと思っていたさ」
あ、そうか。
今、兄さんがどうのこうの言ったからか。
子供にまた気を遣わせてしまったか。
そんなの彼女の態度からヒシヒシ伝わっているさ。
こんなにも無視されると逆に気持ち悪くて。
「それに、君にニールの陰など、僕は求めてはいない。
そこまで僕は君を意識していない。
だって、見れば見る程、君はニールと似ていないんだ」
意識してないって、それはショックだ。
これも彼女の言う言葉の棘? 上手く言えないから?
そして俺は似てないは禁句だ。
能力が似てないとか、もう嫌になるんだ。
「声も似てるようで、微妙に違うし。笑った顔とか、全然似てない!」
え? そっち?
と言いたかった。
そりゃ双子だって、他人は他人だ。生まれた時は同じでも何十年も経てば違うさ。
更に俺達、何年会ってないと思う?
「君と彼を重ねるなんて、反吐が出る。
彼はもっとカッコいい」
「それ、傷つくなー」
兄さん絡みでこんな傷つけ方をされるなんて、初めて。
これは完全に俺を傷つけにかかってる。
容姿とか比べられるなんて。
いつも中身ばっかりだったから。
「おっかしいなー、俺達、親でも間違える位ソックリちゃんだったのに」
「髪型を揃えるからだ。 表情も違うし、仕草も違うし、笑い方も、ご飯の食べ方も、ハロの扱い方だって、似てない」
「そんなに違うか? なら、少しは兄さんに似せた方が良いかな…?」
双子って、必然的に性格が間逆に育つもんなんだ。
「とんでもない! 止めてくれ!」
「うわ! 暴れるな!」
全力で俺を否定した。
俺を止めるようにギュっと首に手を回す。
「てか、初めてだよ」
兄さんに追いつかなくて良いとか。
「冗談。ってか無理」
兄さんと何年会ってないと思う? 二度と会えないし。
「僕の中のニール像は固まっているんだ。下手に君に壊されては困る」
身内の恋バナとか、正直どんな表情をすればいいのか分らない。
ましてや、彼女はそれを失っているんだ。
「それに……、これ以上似たら、ニールに申し訳ない事をしてしまう……」
「へ?」
それって、どう言う意味?
「ロックオーン! ティエリアー! どうしたのー?」
遠くからアレルヤの声が聞こえた。
ぐったりしたティエリアに気付いたんだろう。
「海水飲んだ……おえ」
「早くパラソルの陰に置いてあげなよ」
また戻ってきた。
この場所へ。
シートの上に寝かせると彼女は顔が青い。
「はい、水飲ませてあげて」
水を手渡したスメラギは特に心配する素振りを見せない。
お、ティエリアから奪ったパーカーを着たまま。
狭くてチャックは閉められないよう。
「ティエリアったら、二人で海に潜りに行ってたなんて。抜け目ないわね~?」
この状況を楽しんでます、この人。
ティエリアもグッタリで言い返せない。
「ほら、ティエリア、水だ」
「ん……、ありがとう……」
「あら?」
スメラギは俺の顔を急に覗き込んだ。
「な…何か?」
「ティエリア、可愛いでしょ?」
「はいい?!」
「スメラギ!!」
ティエリアが怒って、額に当てていたタオルを投げつける。
「からかわないで下さい!!」
「本気よー、いいわねー、若いって」
ティエリアに言った筈なのに、ちらり、俺の方を見る。
いや、俺は貴方と年は大して変わらないんですけど。
やっぱり俺に言ったんだ。
俺に詰め寄り、ティエリアに聞こえない大きさで言う、
「どうせ、水着姿見てティエリアが女の子だって知ったんでしょ?」
顔が熱くなった。
彼女には悪いが、全くその通り。だってさ、一人称『僕』だもん。
身長だって高いし、何より体系が……。
ノーマルスーツだって、男の俺達と同じ作りだし。
「そっくりね~、流石双子」
双子という単語にドキリした。
心臓に悪い。
「って、え?! 兄さんも?!」
そうか、兄さんも勘違いしたか。
そりゃそうだよ。これは双子関係なく、誰でも男と思うだろう。
「えぇ?!」
待って、兄さんはこの日にティエリアと結ばれて、この日に男じゃないと知ったのか?
「ホモかよ!!」
「はあ?」
「ほ…何ですか、ソレ?」
俺の中の兄像が崩れてる。
いや全壊だ。
俺が思ってるより、ダメな大人なのか?
幼いティエリアに手を出して、男同士だと知った上で好意を抱いていた?
「ロックオン…?」
「あ、こっちの話です…」
会わない内に…随分と……。
ティエリアが女でよかった……。
「あ、そう言えば、どうだった? ティエリア。海の中は?」
ピクリ、反応した。
横になっていたティエリアは上半身を起こす。
また緩く笑った。
「最高です。……少し、悲しくなる位……」
どうしてだ。
女だと知って、兄さんとの関係を知って、それから彼女が笑う度にキュンと来るのは。
キュンと来てる辺り、双子だな。好みが同じなのかな?
いや、俺は断じてホモではないが。
認めるよ、俺、ティエリアに落ちかかってる。
でも、落ちる事はないよ。
今でも思ってて、泣く程好きだったのに奪う事は出来ない。
戦いの最中に芽生えた恋。うん、美しい。多分物凄く堅いと思う。
奪うなんて、そんな人でなしな事出来るか。
「あのっ…!」
スメラギに言ったと思ったら俺だ。
ティエリアが、俺を見上げてた。
「明日も潜りたいと言ったら、また引っ張ってくれるか…?」
少し恥ずかしげに、ちょっと頬を染めて。
「え…?」
「……」
そんな目で見上げたら。
「あ…ああ!」
「ありがとう」
ごめんなさい兄さん。
俺、人でなしかもしれない。
------------------------------------
≪ティエは本編で予想以上にライルを意識してなかったと思います≫
≪まあ、私、ちゃんと公式小説読んでないんでどうか…;≫
≪ファーストは泣きながらスラスラ読んだのにな≫
≪ティエの容姿は変わらないとライルさんは知らないので≫
≪それでも犯罪級だよ、見た目16の子にとか≫
≪では今日から拍手文を本格的に……≫
PR
Comment
カレンダー
04 | 2024/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
分別
最新記事
(02/19)
(04/15)
(09/04)
(01/31)
(12/15)
プロフィール
HN:
兎羽
HP:
性別:
女性
職業:
実家に帰りたい盛り
趣味:
見ての通り
自己紹介:
只今実家を離れて就職中(東北出身)
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
PC用カウンター
twitter
どんな言葉を覚えるのか気になりました。
何を覚えるのやら。
此処のブログ経由で知った方ならいつでも友達になりたいです!
ブログ内検索
アーカイブ