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こちら「ガンダム00」に心奪われたブログです! 見にくいですが勘弁!愛は本物です。基本、自己満足なんで期待は禁物!
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やっと季節にリンクして。
鯉のぼりネタ。

5は過去拍手のものをカウントしています。

「君がそんなに頭が悪い人間だと思ってなかったよ!!」

「……すまん」


ウチの家計が火の車寸前だ。







【コイノボリミ】








「ティエリア、フクロ破っちゃ駄目だよ。ブリング、レシート」

「えーーー! 返しちゃうの?!」

「仕方ないだろう? ウチにはこんな大きな鯉のぼり、吊るす場所ないんだから」



そう、雛祭りの悲劇がまた起こった。
あの組み立て式のビッグサイズを買って来たあの日、ひょっとしたら子供の日にもしでかすんじゃないかと思ったら。



「いやだぁああ」

「泣いても駄目! ……ダメ…だからね……」


泣き落としは弱いんだ。
でも、本当に飾る場所が無いんだ。ウチはマンションなんだ。


「他の家に飾ってるだろう? 家で飾れるサイズ買い直してあげるから見て我慢して」


高層マンションからは屋根より高い棒に吊るされた鯉のぼりが顔を出す。


「ぃやああああ!」

だだっ子。


「……ティエリア、本当にすまない…」


大好きな方の兄から謝られると何も言えなくなる。
ティエリアの泣くのを我慢してる顔が一番見てると辛い。


「ベランダに吊るせるサイズ買ってあげるから…ね?」


「……ぅん」


本当は大きいのが欲しい、と叫びたいのに。


透明なビニール袋の中のまま、開ける事を許されない。
箱の蓋を閉めればパッケージには空を泳ぐ鯉のぼりの写真。

ティエリアは見るのもつらいと言うようにベランダに出て行った。




「あれは一人で泣きに行ったね…」

「……」

「ちょっと、何で君まで涙目なんだよ!?」


ブリングも半泣き。大人なんだから止めてよ。



「ティエリア……」

「もー、仕方ないでしょ」


ティエリアが泣き虫な所は君にそっくりなのかもしれない。






『鯉のぼり、欲しいのか?』

最近、ずっとベランダに出て何かを見ている妹に話し掛けたのを思い出す。
何を見ているんだろうと覗いてみた。

四月下旬頃、子供の日を目前に早めに飾り始める家庭から空を泳ぐ鯉が見えた。


だからコッソリ会社帰りに買って来たのだが……、誤算だった……。






『アレルヤとハレルヤの家にもあった!』

ニコニコ笑うティエリアは嬉しそうに言った。
もしアレルヤ、ハレルヤより大きかったら自慢するんだと。




「お兄ちゃん…ティエリアを裏切ってしまった……」

「裏切るも何も、元から無理なんだからウチは」



高いマンション、悲しい事に飾る鯉のぼりが綺麗に見える。



ティエリアは風に泳ぐ他の鯉のぼりを見詰めるしかない。


「鯉のぼり…ぼくもほしかった……」

声に出してしまうと、急激に切なくなる。
泣くとおにいちゃんが困ると分かって来た。

目をゴシゴシ。泣きたくないと上を見上げる。






「ティエリア…健気だなー……」


陰に隠れて泣くなんて。
まだ完全に僕等に心を開いてくれないんだね。

駄々を捏ねて、いやだ、絶対大きい鯉のぼり飾りたいと泣いてくれた方が僕は嬉しいのに。


さて、洗濯物を干しに行くと銘打って、ティエリアの顔を覗きに行きますか。



「ティエリアー、僕今から洗濯物干すからねー?」

「……」

無言。ティエリアは顔を隠すように俯いていた。



風が強いから、一瞬髪が掻き上げられて見えるんだ、ティエリアの表情。



「ティエリア、いつまでも外にいたら風邪引くよ?」

「…ぅるさい」


可愛くない答え。
鼻声で申し訳ないけど笑ってしまいそう。


初めは子供っぽくなくてどうしようかと思ったけど、やっぱり子供は子供。
拗ね方は人それぞれ。



「ブリングも悪気があって買ってきた訳じゃないんだから」

「……分かってるもん」

消えそうな声。春の強い風でやっと聞こえた。


本当にここら辺の住宅地一帯の鯉のぼりが見える。



「風強いねー?」

「……」

「洗濯物飛ばされちゃいそう」

「……」

「おわっ!」

そう言ってるそばから。


リジェネの声に驚いたティエリアが顔を上げた。


「やばいやばい、危うくブリングのシャツ、飛ばすところだった……」

ティエリアはというと、ポカーンと。

「あー……」
笑ってくれた方が楽だ。



「今日は干すの止めようかな。ハンガー飛んで行きそう」

グリンと、一瞬90度近くまで風に持って行かれてビックリ。



一瞬、ブリングの大きいTシャツが何かに見えた。


「あ……そうか」



僕はやっぱり天才だ。
そりゃそうだ。テスト勉強しなくても赤点は採らないもん。

褒められた事はないけど。



「ブリング! 鯉のぼり!」


バン、窓を開けると未だ半ベソのブリングが鯉のぼりの箱を袋に詰め戻していた。
情けない、泣くな。



「は?」

「僕は天才だ」






黒、赤、青、それとこのピラピラしてるのって何て言うんだろう?



マンション5階のベランダから3本鯉の尻尾が出てきた。


「うあー! うあーーー!」


天才な僕が考えてついた案のデメリットは暫く洗濯物を干せなくする事。

洗濯物干しに吊るせばいいんじゃないか。



パチパチパチ。
ブリングが素直に拍手した。


僕が袋を破った時の顔は面白かった。


「リジェネ、頭よかったんだーー!」

「そうだよー!」

抱きついてきた!
ああ、嬉しいよ。こんな事がないと抱きついてくれないのが悲しいけど。


嬉しくて狭いベランダでピョンコピョンコ跳ねてる。


「きゃははははっ」

走り回り始める。

すると一瞬でブリングの顔が強張る。落ちたらどうするとオロオロしながらティエリアを追いかけるのだ。
落ちないよ、柵高いじゃん。


「ぶっ」

身長が高いため、ブリングの顔に鯉のぼりが絡まった。


「あははは~、君、絶対僕より頭悪いよねー?」

顔を赤らめる。
彼に柔軟な発想は中々出来ない。



走り回った後はじーっと泳ぐ鯉のぼりを見上げるのだ。

「そんな見てたら首疲れるよ?」

でも無視。夢中だ。



「ティエリア鯉のぼりそんなに好き?」

「好き好き!」

「じゃあ僕と鯉の」

「鯉のぼり!!」

言わせないか。
そうか、僕はこんな布切れより低いのか。

いつになったら見返りが返ってくるんだ、



「そう言えば鯉のぼりって一家族なんだろう?」

歌にもあったよね。


大きい順から、父親、母親、子供なんだろう。
少し僕ら兄弟には痛い代物だ。




「あのね、一番でっかいのがおにいちゃん! 赤いのがリジェネ、最後がぼく!」


待って、赤は確かお母さんじゃない? 僕男。
でも、ティエリアのそんな発言が出来る家族であれると思うと嬉しいんだ。


良かった、妹は予想以上に強いらしい。




「じゃあ、一番上のピラピラは?」

「………、ほかのおにいちゃんたち全部!」


わあみんな可哀そうに。
ティエリアと一緒に暮らす者の特権。



「ねえねえ、鯉のぼり、もっと見てよ?」

ティエリアがブリングの服を下に引っ張る。つまりそこに座れと言っているんだ。
『汚いだろう』と言いたいところだがブリングはそう小さい人間じゃない。


「え、なになに? お花見じゃなくて鯉のぼり見?」

リジェネはそういう妹の突拍子もないイベントが大好きだ。大分語呂が悪い命名をしてブリングの直ぐ横に座るのだ。
尻が汚れたら洗濯すればいいんだ。


「こいのぼりみー?」


いつもの様にブリングの体の間に座ろうとするティエリア。リジェネは舌打ちした。


並んでベランダに体育座り。でも階数が高いから周りからは見えないだろう。
5月の風は生温くて。適温だ。

ティエリアもブリングの中にいるから冷える心配もないし。




「あれ?」


頭が良い僕はもう一つある事に気がついた。


「ひょっとして、僕等の鯉のぼりがこの街の中で一番高いんじゃない?」


そう言うとティエリアは満面の笑みで隣からダイブしてきてくれた。


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≪ウチにも大きな鯉のぼりはありませんでした……、未だに憧れ≫
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