こちら「ガンダム00」に心奪われたブログです!
見にくいですが勘弁!愛は本物です。基本、自己満足なんで期待は禁物!
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前回の続き。
つっこみとか苦情とかは勘弁。
「ライル、ティエリアが何処にもいないの!」
「先に帰ったんじゃないか? まだ16だろ? 酒飲めないから」
「……そうだと良いんだけど…。あの子が黙って帰るなんて」
私がこの人と結婚しても、一緒に住もうと言ったのに。
この人も同意してくれたのに。
【GOOD-BYE HALCYON DAYS-2】
夢も見なかった。
吸った空気が喉に刺さった。
「っかは……、ゲホッ、ゲホッ……」
見えた天井はとても汚かった。
この匂いは保健室に似ていて、自分はベッドに寝かされているんだと把握した。
生きてる。
死ねなかった。
「おー、起きたか」
聞き慣れた声に驚いた。
人懐っこい笑顔でドアから入って来たのは昨日の記憶を呼び起こす人物。
「起き上がるな、寝てろ」
ライルだ。
明るい所で見て、確信に変わった。
昨日、倉庫で見かけ、着いて行ったら銃撃戦。
それよりも、聞きたい事があった。
「ねぇ…さん…は?」
「姉さん?」
首を傾げながらベッドに近づく。
しゃがれた声。喉が張り付いて声が上手く出ない。
まさか初夜を僕なんかの為に潰してしまったのか?
姉さんを置いて来たのか?
僕なんか、探さなくて良かったのに。
枯れた声に気付いた彼が、水差しから水をコップに注いでくれた。
「お前、強運だな。あんなに深く刺されても生きてるんだもん」
コップを渡されたが飲もうとは思わない。早く回答が欲しい。
「いきなりで悪いが、お前さんに聞きたい事がある」
「何…だ?」
緩く笑っていた表情が急に引き締まる。
口を開くが、この部屋へ入ってきた人物によって阻止された。
「目を覚ましたか」
ドアから顔だけ出した髭を生やした男。
金髪をマッシュルームカット。サングラスを掛けていた。
「元気そうだな」
白衣を着ている事からこの人が医者だと言う事は直ぐに分かった。
「……後で、話が終わったら来てくれ、ロックオン」
ロックオン?
彼はライルの筈だ。
「分かった…、ありがとう。あ、今の人モレノさんね」
深刻そうな顔をしていたのを感じ取ったドクターは後で来いとだけ言い残して早々に去って行った。
と、言う事は寝ている僕は何処かを手当されたんだ。探ると腹に巻かれた包帯に気付く。
「手当…してくれたのか?」
「ああ……、巻き込んで悪かったな。あんな時間にうろつくお前も悪いぞ」
巻き込んだ?
それよりも、さっきドクターは彼を「ライル」ではなく「ロックオン」と呼んだ。
それが気になって仕方ない。
「貴方は……」
「本題に戻る、お前さんに聞きたい事がある」
それはこちらもある。
しかし、まずこの違和感が何なのか突き止めたい。
とりあえず今、いつもの彼と口調が若干違う事に気が付く。
「お前、俺の事、ライルって呼んだよな……?」
「は、はい……。だって貴方は……」
「残念だが、俺はライルじゃない」
「……はい?」
だって、その声、髪型、瞳の色、顔立ち、体格。全てライルだ。
「何を言っているんだ…?」
「ライルと、お前はどんな関係だったんだ?」
むっとした。質問しても質問で帰って来る。
自分がライルじゃないと訳の分からない事を言う。
「ライルは……僕の姉と昨晩結婚式を上げた」
目を見開くと、急に力無く近くにあった椅子に座った。
「あはは…、そうか、あいつ…結婚したか……」
笑いながら前髪を掻き分けた。
それが涙を拭く為のカモフラージュだとティエリアは見抜いた。
「質問に答えてくれてありがとう、俺も質問に答えるよ。
…俺はライルじゃない、ライルの兄だ」
「兄?」
「俺はニール」
それなら辻褄が合う。そっくりでも可笑しくない。
名前も似ている。
「しかし、彼から兄がいるとは聞いた事が無い」
「そりゃそうだろうな……、あいつは俺が死んでると思ってるだろうからな」
「死んでる?」
その質問には答えてくれなかった。
困った様に笑って誤魔化された。
今更だが、腕に点滴が刺されている事にも気が付いた。
「本当に悪かったな、それ」
昨日刺された腹を指差した。
「痛いか?」
「いえ、特に」
本当に痛くなかった。刺された時も痛くなく、人間はあまりにもの衝撃には気付かない様に出来ているのではないだろうか?
「それと、ありがとう。お前がいなかったら俺は死んでた」
すると自ら袖をめくって見せる。見えた腕には包帯が巻かれていた。
昨晩撃たれた箇所なんだろう。
「利き腕を撃たれちまってさ、当分は仕事できねぇな」
「仕事?」
「あ、いや」
また誤魔化された。
「そうだ、もう一つ聞きたい事があったんだ」
「何だ?」
「お前昨日、相手が拳銃持ってたのに何で飛び込んだんだ?」
昨日の事を思い出す。
コンテナの陰から出て来た時の話だ。
「残りの銃弾の数が、一人が残り2発で、もう一方は1発だったので」
「銃弾の? どうして分かったんだ?」
「あの型の銃は以前、本で読んだ事があって…込めれる数を知っていたんです。だから撃った数をカウントして……」
ニールは疑問を抱く。あの時、敵二人は銃を乱れ打ちしていた。
どちらが何発ずつ撃ったなんて分かる筈が無い。
「まさかお前、聞き分けたのか、銃声を…?」
「ええ、そうですが?」
はぁーっと感嘆を漏らす。
「凄い耳だな」
凄いのは耳だけじゃない。その身体能力だ。
まるで動物の様に動いていたのを目の当たりにした。
人間離れしていた。人間じゃない様だった。
怪我の所為で意識が朦朧として、見間違えたかもしれないが。
「絶対音感…なんです、僕」
絶対音感ではない人からしてみれば、分からない感覚。
その感覚は人と比較できないから、それを絶対音感だと思っていた。
「ま、元気で何よりだ。
話逸れちまったが、怪我も思ったよりも酷くない様だし送るよ」
送る……。
「昨日は姉さんの結婚式だったんだろ? どうしてあんな所にいたんだよ?
ひょっとして、ライルに姉を盗られたみたいでプチ家出?」
ちゃらけて言う。
そうだ、ライルに姉さんを盗られたんだ。
「帰らない……」
「は? 大丈夫だ、怒らないって。上手く誤魔化すよう手配してあるから……」
「帰らない、僕にはもう、居場所が無いんだ」
それを声に出して言うと、涙が出て来た。
不思議だ、今までどんなに悲しくても、涙なんて出てこなかったのに。
姉が結婚すると聞いても、涙なんて一滴も出てこなかったのに。
襲ったのは失望感と絶望感。湧き上がる怒りと、直ぐに訪れた諦め。
「何言ってるんだ……?」
彼も困った顔から焦った顔に変わる。
このまま家に帰ると嘘を吐き、もう一回死ねば良いのに、不覚にも寂しいと言う感情に支配された僕は誰にも話した事の無かった素性を全て話してしまった。
「僕は5つの頃、多分、孤児院か何かから逃げたんだ」
「何でだ?」
「覚えていない。断片的な映像しか覚えていない。
姉は僕より8歳年上だった。姉だってまだ子供だったのに、まだ何も知らない僕を一人で育ててくれた。国からの援助じゃ足りないお金は姉がアルバイトで稼いでくれた。
それなのにあの頃の僕は、いつも何かに脅えていて、」
「それも覚えてない?」
「ああ。そんな僕にいつも笑顔で「私が貴方をずっと守ってあげるから」と言ってくれた。
だから、僕はいつか今度は僕が姉を守るんだと思っていた」
でも……。
そこでニールは気付いた。
この子が帰りたくないと言う理由を、悟ったから。
話を聞くと、どうやら姉と二人暮らしの様だ。仲睦まじく、助けあったここまで生きて来た。
そこに弟と言う存在。
「姉は、ずっと…ずっと苦労してたんだ。僕を幸せにしようと、いつも一生懸命だった……。 だからいつか僕が姉さんを………でも、僕じゃなかった」
姉さんを幸せにする存在は。
弟が彼の場所を奪ったんだ。
汗がじっとりと背中を流れる。
「二人の生活に、僕は邪魔者だ……、二人の家庭に、僕は不要だ」
この子が、どうして人気のない海岸を一人で歩いていたか何となく理由が想像できた。
「どうしてそうなる、」
言わずにはいられない。
「貴方には分からない…!」
分かる筈など無い。
多分、この二人が歩んできた苦労は俺の想像を超えているのだろう。
それ以上ニールは何も言えなくなった。
他人に口を挟める程、自分は良い人間ではないから。
でも、自殺なんて間違ってる。
「なあ、お前……」
「ロックオン!!!」
再び会話を遮られた。ビクッと体が跳ねた。
さっきとは違う、バンとドアを荒々しく開けた。
ドクターに続き、またこの病室への訪問者。
「ミス・スメラギ…女性ならもっと静かに」
ティエリアは何が何だか分からなかった。
いきなり入って来た女性はスメラギを呼ばれていた。
大胆に胸元を開けた服装、長い髪があちこちに緩くウェーブする。
とても看護婦には見えない。
「あら、おはよう。人形さんみたいに可愛いわね?」
「ちょっと、何ですか?!」
「モレノさんがもっとこの子、詳しく検査したいって言い出してね、場所変更」
「詳しく検査って…、この子、早く帰さないと! 此処は危険すぎる」
「もう! 融通のきかない子ね!」
スメラギがティエリアの前に来た。
すると「失礼」と断って自分に刺さっていた点滴を乱暴に外した。
「ロックオン、この子を担いで至急外に止めてる車に乗って」
「ちょっと! 待って下さいよ!!」
「煩いわね! そんなの承知よ! モレノさんがそこまでして検査したい何かがあるのよ!」
この子には、と指さす相手は勿論ティエリア。
「は? な、止めて下さいっ!」
ニールは思い当たる節がある。
ありえない身体能力。ありえない回復力。
手当てしていた時、ドクターが言った言葉が脳裏に過る。
『この出血量だと、普通の人間は死ぬ。それに傷が塞がり始めている』
自分は目の前で見た。これ以上の説得は無い。
『一度、じっくり診察したいと、医者の血が騒いでる』
離せと言われても離す訳にはいかない。
腹に負担が掛かる為、担ぐ事は出来ない。代わりにお姫様抱っこ。
「ミス・スメラギが運転するんですか…?」
「何? 悪い?」
「いえ……」
「この子をモレノさんの家の前まで置いて来たら私達は早急に立つわ」
「了解」
ティエリアは頭が付いていかない。
走り抜ける廊下を見て気付いた。
ここは病院 だった 場所なのだろう。非常に汚い。
廃屋だ。
何でこんな所に自分は寝かされていたんだ?
なぜちゃんとした病院じゃないのだ?
しかし、そんな思考は直ぐに途切れた。
でも、もうこんな人生どうでも良かったから。
一度捨てると決めた人生だったから。
ティエリアは流れに身を任せてしまった。
------------------
≪続きます…≫
つっこみとか苦情とかは勘弁。
「ライル、ティエリアが何処にもいないの!」
「先に帰ったんじゃないか? まだ16だろ? 酒飲めないから」
「……そうだと良いんだけど…。あの子が黙って帰るなんて」
私がこの人と結婚しても、一緒に住もうと言ったのに。
この人も同意してくれたのに。
【GOOD-BYE HALCYON DAYS-2】
夢も見なかった。
吸った空気が喉に刺さった。
「っかは……、ゲホッ、ゲホッ……」
見えた天井はとても汚かった。
この匂いは保健室に似ていて、自分はベッドに寝かされているんだと把握した。
生きてる。
死ねなかった。
「おー、起きたか」
聞き慣れた声に驚いた。
人懐っこい笑顔でドアから入って来たのは昨日の記憶を呼び起こす人物。
「起き上がるな、寝てろ」
ライルだ。
明るい所で見て、確信に変わった。
昨日、倉庫で見かけ、着いて行ったら銃撃戦。
それよりも、聞きたい事があった。
「ねぇ…さん…は?」
「姉さん?」
首を傾げながらベッドに近づく。
しゃがれた声。喉が張り付いて声が上手く出ない。
まさか初夜を僕なんかの為に潰してしまったのか?
姉さんを置いて来たのか?
僕なんか、探さなくて良かったのに。
枯れた声に気付いた彼が、水差しから水をコップに注いでくれた。
「お前、強運だな。あんなに深く刺されても生きてるんだもん」
コップを渡されたが飲もうとは思わない。早く回答が欲しい。
「いきなりで悪いが、お前さんに聞きたい事がある」
「何…だ?」
緩く笑っていた表情が急に引き締まる。
口を開くが、この部屋へ入ってきた人物によって阻止された。
「目を覚ましたか」
ドアから顔だけ出した髭を生やした男。
金髪をマッシュルームカット。サングラスを掛けていた。
「元気そうだな」
白衣を着ている事からこの人が医者だと言う事は直ぐに分かった。
「……後で、話が終わったら来てくれ、ロックオン」
ロックオン?
彼はライルの筈だ。
「分かった…、ありがとう。あ、今の人モレノさんね」
深刻そうな顔をしていたのを感じ取ったドクターは後で来いとだけ言い残して早々に去って行った。
と、言う事は寝ている僕は何処かを手当されたんだ。探ると腹に巻かれた包帯に気付く。
「手当…してくれたのか?」
「ああ……、巻き込んで悪かったな。あんな時間にうろつくお前も悪いぞ」
巻き込んだ?
それよりも、さっきドクターは彼を「ライル」ではなく「ロックオン」と呼んだ。
それが気になって仕方ない。
「貴方は……」
「本題に戻る、お前さんに聞きたい事がある」
それはこちらもある。
しかし、まずこの違和感が何なのか突き止めたい。
とりあえず今、いつもの彼と口調が若干違う事に気が付く。
「お前、俺の事、ライルって呼んだよな……?」
「は、はい……。だって貴方は……」
「残念だが、俺はライルじゃない」
「……はい?」
だって、その声、髪型、瞳の色、顔立ち、体格。全てライルだ。
「何を言っているんだ…?」
「ライルと、お前はどんな関係だったんだ?」
むっとした。質問しても質問で帰って来る。
自分がライルじゃないと訳の分からない事を言う。
「ライルは……僕の姉と昨晩結婚式を上げた」
目を見開くと、急に力無く近くにあった椅子に座った。
「あはは…、そうか、あいつ…結婚したか……」
笑いながら前髪を掻き分けた。
それが涙を拭く為のカモフラージュだとティエリアは見抜いた。
「質問に答えてくれてありがとう、俺も質問に答えるよ。
…俺はライルじゃない、ライルの兄だ」
「兄?」
「俺はニール」
それなら辻褄が合う。そっくりでも可笑しくない。
名前も似ている。
「しかし、彼から兄がいるとは聞いた事が無い」
「そりゃそうだろうな……、あいつは俺が死んでると思ってるだろうからな」
「死んでる?」
その質問には答えてくれなかった。
困った様に笑って誤魔化された。
今更だが、腕に点滴が刺されている事にも気が付いた。
「本当に悪かったな、それ」
昨日刺された腹を指差した。
「痛いか?」
「いえ、特に」
本当に痛くなかった。刺された時も痛くなく、人間はあまりにもの衝撃には気付かない様に出来ているのではないだろうか?
「それと、ありがとう。お前がいなかったら俺は死んでた」
すると自ら袖をめくって見せる。見えた腕には包帯が巻かれていた。
昨晩撃たれた箇所なんだろう。
「利き腕を撃たれちまってさ、当分は仕事できねぇな」
「仕事?」
「あ、いや」
また誤魔化された。
「そうだ、もう一つ聞きたい事があったんだ」
「何だ?」
「お前昨日、相手が拳銃持ってたのに何で飛び込んだんだ?」
昨日の事を思い出す。
コンテナの陰から出て来た時の話だ。
「残りの銃弾の数が、一人が残り2発で、もう一方は1発だったので」
「銃弾の? どうして分かったんだ?」
「あの型の銃は以前、本で読んだ事があって…込めれる数を知っていたんです。だから撃った数をカウントして……」
ニールは疑問を抱く。あの時、敵二人は銃を乱れ打ちしていた。
どちらが何発ずつ撃ったなんて分かる筈が無い。
「まさかお前、聞き分けたのか、銃声を…?」
「ええ、そうですが?」
はぁーっと感嘆を漏らす。
「凄い耳だな」
凄いのは耳だけじゃない。その身体能力だ。
まるで動物の様に動いていたのを目の当たりにした。
人間離れしていた。人間じゃない様だった。
怪我の所為で意識が朦朧として、見間違えたかもしれないが。
「絶対音感…なんです、僕」
絶対音感ではない人からしてみれば、分からない感覚。
その感覚は人と比較できないから、それを絶対音感だと思っていた。
「ま、元気で何よりだ。
話逸れちまったが、怪我も思ったよりも酷くない様だし送るよ」
送る……。
「昨日は姉さんの結婚式だったんだろ? どうしてあんな所にいたんだよ?
ひょっとして、ライルに姉を盗られたみたいでプチ家出?」
ちゃらけて言う。
そうだ、ライルに姉さんを盗られたんだ。
「帰らない……」
「は? 大丈夫だ、怒らないって。上手く誤魔化すよう手配してあるから……」
「帰らない、僕にはもう、居場所が無いんだ」
それを声に出して言うと、涙が出て来た。
不思議だ、今までどんなに悲しくても、涙なんて出てこなかったのに。
姉が結婚すると聞いても、涙なんて一滴も出てこなかったのに。
襲ったのは失望感と絶望感。湧き上がる怒りと、直ぐに訪れた諦め。
「何言ってるんだ……?」
彼も困った顔から焦った顔に変わる。
このまま家に帰ると嘘を吐き、もう一回死ねば良いのに、不覚にも寂しいと言う感情に支配された僕は誰にも話した事の無かった素性を全て話してしまった。
「僕は5つの頃、多分、孤児院か何かから逃げたんだ」
「何でだ?」
「覚えていない。断片的な映像しか覚えていない。
姉は僕より8歳年上だった。姉だってまだ子供だったのに、まだ何も知らない僕を一人で育ててくれた。国からの援助じゃ足りないお金は姉がアルバイトで稼いでくれた。
それなのにあの頃の僕は、いつも何かに脅えていて、」
「それも覚えてない?」
「ああ。そんな僕にいつも笑顔で「私が貴方をずっと守ってあげるから」と言ってくれた。
だから、僕はいつか今度は僕が姉を守るんだと思っていた」
でも……。
そこでニールは気付いた。
この子が帰りたくないと言う理由を、悟ったから。
話を聞くと、どうやら姉と二人暮らしの様だ。仲睦まじく、助けあったここまで生きて来た。
そこに弟と言う存在。
「姉は、ずっと…ずっと苦労してたんだ。僕を幸せにしようと、いつも一生懸命だった……。 だからいつか僕が姉さんを………でも、僕じゃなかった」
姉さんを幸せにする存在は。
弟が彼の場所を奪ったんだ。
汗がじっとりと背中を流れる。
「二人の生活に、僕は邪魔者だ……、二人の家庭に、僕は不要だ」
この子が、どうして人気のない海岸を一人で歩いていたか何となく理由が想像できた。
「どうしてそうなる、」
言わずにはいられない。
「貴方には分からない…!」
分かる筈など無い。
多分、この二人が歩んできた苦労は俺の想像を超えているのだろう。
それ以上ニールは何も言えなくなった。
他人に口を挟める程、自分は良い人間ではないから。
でも、自殺なんて間違ってる。
「なあ、お前……」
「ロックオン!!!」
再び会話を遮られた。ビクッと体が跳ねた。
さっきとは違う、バンとドアを荒々しく開けた。
ドクターに続き、またこの病室への訪問者。
「ミス・スメラギ…女性ならもっと静かに」
ティエリアは何が何だか分からなかった。
いきなり入って来た女性はスメラギを呼ばれていた。
大胆に胸元を開けた服装、長い髪があちこちに緩くウェーブする。
とても看護婦には見えない。
「あら、おはよう。人形さんみたいに可愛いわね?」
「ちょっと、何ですか?!」
「モレノさんがもっとこの子、詳しく検査したいって言い出してね、場所変更」
「詳しく検査って…、この子、早く帰さないと! 此処は危険すぎる」
「もう! 融通のきかない子ね!」
スメラギがティエリアの前に来た。
すると「失礼」と断って自分に刺さっていた点滴を乱暴に外した。
「ロックオン、この子を担いで至急外に止めてる車に乗って」
「ちょっと! 待って下さいよ!!」
「煩いわね! そんなの承知よ! モレノさんがそこまでして検査したい何かがあるのよ!」
この子には、と指さす相手は勿論ティエリア。
「は? な、止めて下さいっ!」
ニールは思い当たる節がある。
ありえない身体能力。ありえない回復力。
手当てしていた時、ドクターが言った言葉が脳裏に過る。
『この出血量だと、普通の人間は死ぬ。それに傷が塞がり始めている』
自分は目の前で見た。これ以上の説得は無い。
『一度、じっくり診察したいと、医者の血が騒いでる』
離せと言われても離す訳にはいかない。
腹に負担が掛かる為、担ぐ事は出来ない。代わりにお姫様抱っこ。
「ミス・スメラギが運転するんですか…?」
「何? 悪い?」
「いえ……」
「この子をモレノさんの家の前まで置いて来たら私達は早急に立つわ」
「了解」
ティエリアは頭が付いていかない。
走り抜ける廊下を見て気付いた。
ここは病院 だった 場所なのだろう。非常に汚い。
廃屋だ。
何でこんな所に自分は寝かされていたんだ?
なぜちゃんとした病院じゃないのだ?
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兎羽
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性別:
女性
職業:
実家に帰りたい盛り
趣味:
見ての通り
自己紹介:
只今実家を離れて就職中(東北出身)
A型!身長約150!腐女子!
人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
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人生最大的にガンダム00にハマった訳で。
映画終わってもまだまだ熱いもん!
※別ブログによってHNが違いますが、私です。
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